バイデン政権の外交、内政について、パックンと元外交官が深堀り解説

パックン×中川浩一(前編)
パトリック・ハーラン×中川浩一

難民、移民問題はバイデン政権のアキレス腱

パックン バイデン政権は、中国との間で、「ツートラック」外交ができるかが試されていると思います。人権外交と環境保護外交を完全に分けて進められればいいんですけど、どこかで中国が、その使い分けに反発するかもしれません。

 

もう一つ、バイデン政権にとってネックとなるのはアメリカ国内の人権問題です。トランプ政権からバイデン政権に変わっただけで、移民がアメリカ南部の国境へ殺到しているんです。この数ヵ月だけで何十万人もの規模で入国者数が一気に跳ね上がりました。バイデン大統領は、移民、難民に対して、今はまだ、アメリカに来れるような状況ではないと言っていますし、一回アメリカに入国した人をまたメキシコとかに追放、送還してもいます。それでも、まだ難民、移民はアメリカに来ています。バイデン大統領はやはり「トランプ大統領よりは難民、移民にやさしい、バイデンはいい人だ」というイメージが移民希望者に広がっているのです。

この点、トランプ大統領は、不法入国者に対し、虐待と言っていいぐらい冷遇しました。刑務所みたいなところに収容もしました。これは明らかに人権問題です。しかし、その強い姿勢は、少なくとも移民の希望者を減らす効果があり、アメリカ国民は、結構それを評価しているのも事実です。子どもを保護者から引き離すようなトランプ政権の政策は誰も認めてませんが、不法入国が減ったという結果は良かったと思っているアメリカ人は多いんです。トランプ政権から方向転換したいバイデン政権ですが、移民問題に対しては、板挟み状態になっている気がします。

メキシコからアメリカへの亡命を希望する人々(2018年 photo by gettyimages)

中川 今でもアメリカではトランプ現象が消えていないと言われていますが、バイデン政権はこの移民問題でハンドルを誤ると、4年後の大統領選挙にも影響しかねない大きな内政問題に発展しそうですね。

パックン 移民問題は、バイデン政権にとってはアキレス腱みたいなものです。弱みをつかまれているのです。道徳的に考えると、移民、難民は多く受け入れた方がよいに決まっています。しかし、特に不法移民が1人でもアメリカに入国して、殺人やレイプなどの犯罪をすると、保守メディアでものすごく取り上げられ、バイデン大統領が入れたんだ、許してたまるかと、反移民感情を煽ることに使われます。

そうすると、トランプ大統領の再選につながったり、トランプ・チルドレンと呼ばれる上院議員たちの次期大統領選への挑戦につながるかもしれませんので、本当にバイデン大統領にとってはリスクを伴う問題なのです。

イラン核合意からの離脱は、トランプ政権の「負の遺産」

中川 バイデン政権が掲げる国際協調主義については、2015年にオバマ政権下で結ばれ、2018年にトランプ政権が破棄した、「イラン核合意への復帰」も、選挙公約の一つです。ただ、先述の、気候変動に関するパリ協定への復帰や、WHOへの復帰と違い、イラン核合意への復帰は、イランが合意を順守するなら、アメリカも復帰するという条件付きなんです。

先日も、ウィーンで、アメリカを除くイラン核合意の当事国(イラン、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国)が集まり、なんとかアメリカの復帰に向けて外交努力が続いてますが、アメリカとイランの間で、トランプ政権下で課した制裁をバイデン政権が先に解除するか、イランが当時の核合意の約束を守るか、どちらが先に妥協するかチキンゲームが続いている状況です。私は、バイデン政権の高官とも話をしていますが、アメリカは絶対折れないと思います。もし、バイデン政権がイランに折れたら、アメリカ国内でもたないんじゃないでしょうか。

パックンは、イラン人にはどういう感情を抱いているんですか。アメリカにとってイランは、1979年の米大使館占拠事件以来の敵国ですよね。

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