バイデン政権の外交、内政について、パックンと元外交官が深堀り解説

パックン×中川浩一(前編)
パトリック・ハーラン×中川浩一

外交は、「人権重視」と「国際協調主義」がキーワード

中川 私は、バイデン政権の外交のポイントは二つあると思います。一つは、アメリカの民主党政権は基本的価値、すなわち民主主義、人権、和平、貧困撲滅、環境保護などを重視しますが、バイデン大統領は早速、その原則に基づいた外交を展開しています。特に人権については、中国新疆のウイグル自治区での民族弾圧の問題を重要視していて、先般のアラスカでの米中の外交トップ同士の会談でも激しい火花が散りました。中東でも、2019年、トルコのサウジアラビア総領事館でジャーナリストが殺害された事件(カショギ事件)について、それを首謀したとみられるムハンマド皇太子をトランプ大統領は見て見ぬふりでしたが、バイデン政権は追及しました。バイデン大統領はムハンマド皇太子をカウンターパートとして扱っていません。

パックン ただ、このカショギ事件については、バイデン大統領はムハンマド皇太子を名指しで批判したわけでも、経済制裁の対象にしたわけでもなく、あいまいさを残しているのがポイントかなと思います。ムハンマド皇太子は今後国王になるかもしれないので。バイデン政権がひるんだとまでは言いたくないですけど、大人の判断をしたということかと思います。

中川 もう一つは、国際協調主義。バイデン大統領は、トランプ政権で離脱した、気候変動に関する「パリ協定」に政権発足初日に復帰しました。また、同じくトランプ政権下で脱退を決定したWHO(世界保健機関)も、初日に脱退を撤回しました。いずれもトランプ大統領とは逆の政策ですごくわかりやすい。でも「人権」という世界の共通の課題でどこまで貫き通せるのかは、もう少し様子を見る必要がありそうですね。

中川浩一氏

パックン ちょうどいい塩梅がどこにあるのか、難しいですね。バイデン政権は、まだ、政権発足から間もない蜜月期間だから、いいね、いいねと思わせるのは楽なんですよ。中国のウイグル自治区における人権弾圧も、トランプ大統領なら傍観していました。しかし、バイデン大統領がウイグルの問題に強い姿勢を示したのは、米国の民主党リベラル派からすごく支持されました。人権問題に言及しているバイデン大統領はかっこいいとなるのです。また、バイデン大統領が中国に対して強い姿勢を見せることは、国内の共和党支持者ら右派からも、いいぞ、いいぞとなります。これまでのところ、左派にも右派にもちゃんとアピールできている

でも、この先には中国と協力しないとできないことがたくさんあります。環境問題しかり、パンデミック対策しかりです。コロナの起源を探るWHOの調査報告書にしても、中国の科学者と共同で作成しました。調査結果が偏っているという批判はありますが、中国の協力なしにはできなかったのです。また、これからの世界貿易の体制、WTO(世界貿易機関)を改革するためのルールづくりもそうです。ですので、中国に対して、いつまで強い言動をとり続けることができるかは難しいですね。

中川 気候変動でも、元国務長官のケリー特使が、バイデン政権初の高官として中国を訪問しました。その意味では、グローバルイシューでは米中はちゃんと協力する、しかし、同時に、バイデン大統領は中国を、「民主主義と専制主義の戦い」となぞらえ、かなり激しい対中姿勢を示しているのも事実です。

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