屋上はなんとルーフトップバー!
「豪華ホテル」に変貌を遂げた小学校も

そんな成り立ちだから、元小学校の使われ方には黙っていない。自分たちで作った番組小学校だ。どうするかは地元で考える。賛否両論喧々諤々の結果がここへ来て形となり、大学やホテルに役割を変え、話題を呼んでいる。中でもアキオの一押しは、元清水小学校から生まれ変わった「ザ・ホテル青龍 京都清水」だ。

校舎建設当初から評判だった、タイル貼りの外観やスパニッシュ瓦を上手に活用。
写真提供/ザ・ホテル青龍 京都清水

昨年春にオープンしたこのホテルは、その名前からわかるように、清水寺から8分ほどの坂の途中にある。明治に下京第27番組小学校として開校し、1933(昭和8)年に東大路通から清水へと移転したが、新校舎建設当初から、その欧州風デザインが話題を集めていた。しかし、一等地にある龍池小学校とは立地条件が違い、公共施設は難しい。賛否両論あったが、清水自治会連合会がまとめ役となり、ホテルとして再利用することに決まった。コンペのための選定委員を決め、外資ではなく、国内の企業を選んだ。NTT都市開発に建設を任せ、内装は乃村工藝社、運営はプリンスホテルが担い、バーは京都のカリスマ・バトラー、西田稔に依頼した。ここが小学校だったことを踏まえ、「記憶を刻み、未来へつなぐ」をコンセプトに掲げながら。

 

本当に、これが小学校学校だったのか――。初めてエントランスに立った時、正直、溜息がでた。

贅沢なリゾートホテルの雰囲気を醸し出しているのだ。2階にあたる小学校講堂はライブラリーを備えたレストランに、校庭はガーデンに、校舎屋上はルーフトップバーに生まれ変わっている。そのルーフトップバーが実に素敵なのだ。法観寺・八坂の塔がすぐそこに――。京都でなければ得られない眺望を満喫できる。

京都の街を一望できる「K36 Rooftop」。写真提供/K36 The Bar & Rooftop

京都に来るまでの私は実際、世界の国々を巡っていた。ホームステイすることが多かったのだが、時々一人になりたくて、ホテルのバーで息を抜いたものだ。ルーフトップバー初体験は米国NYマンハッタンだった。次はタイのバンコック。都会の喧騒の中にありながら、夕景を楽しみ、満点の星の下で味わう開放感は最高なのである。しかしながら、やや遠くに清水寺を見上げ、八坂の塔を間近に眺めながら月を愛でお酒を楽しむなどという、日本人としての誇りをくすぐる風流な空間は、ここにしか存在しない。

本当は秘密にしたいスポットだが、しかし、最後まで読んで頂いた方には、ここに滞在されることをお勧めする。宿泊が無理でも、ルーフトップバーは訪れるべきだ。その前に清水寺の観音さまに手を合わせ、以前ご紹介した縁結び「地主神社」に参拝することが望ましい。(該当の記事はコチラ!)そして翌日はマンガミュージアムに出向き、人工芝の上に身を置いて東村アキコ作品を確認する。明治以来の京都町衆の心意気の一端を感じながら、いつもとは違う京都旅行が味わえるはずである。コロナ後のお楽しみに、ぜひ。(文中敬称略)

illustration/東村アキコ

文/秋尾沙戸子
名古屋生まれ、東京育ち、のち京都暮らし。サントリー宣伝部を経て、NHK「ナイトジャーナル」キャスターや情報番組コメンテーターとして活躍。著書に『ワシントンハイツ:GHQが東京に刻んだ戦後』(新潮文庫、第58回日本エッセイスト・クラブ賞)、『運命の長女』(第12回アジア・太平洋賞特別賞)、『スウィング・ジャパン』『渋谷の秘密』など。

イラスト/東村アキコ
1975年生まれ。漫画家。宮崎県出身。1999年『ぶ~けデラックス』NEW YEAR増刊にて『フルーツこうもり』でデビュー。『ひまわりっ~健一レジェンド?』『ママはテンパリスト』、『海月姫』(第34回講談社漫画賞少女部門受賞)、『かくかくしかじか』(第8回マンガ大賞、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞)、『東京タラレバ娘』『美食探偵 明智五郎』『雪花の虎』ほか、ヒット作多数。『講談社「Kiss」にて「東京タラレバ娘シーズン2」連載中!
 

連載【アキオとアキコの京都女磨き
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