東京から京都に移り住んだジャーナリストの秋尾沙戸子さんと、秋尾さんを京都の師とあおぐ漫画家の東村アキコさんの連載「アキオとアキコの京都女磨き」、今回のテーマは「小学校愛」

京都のど真ん中にあって、秋尾さんがずっと気になっていたという「京都国際マンガミュージアム」。東村アキコさん作品も置かれているこの博物館、元の姿はなんと「小学校」だった!? そもそもなぜ京都にマンガ? 学校設立に至るまでの京都ならではの「小学校愛」、校舎校庭リノベで新たに生まれたロマンあふれる必訪スポットもご紹介します。

記事最後に掲載の漫画家・東村アキコさん本連載書き下ろしイラストも必見!

京都になぜマンガ?
広大な敷地に広がるミュージアムの不思議

「京都国際マンガミュージアム」――。京都市ど真ん中の交差点で、建物の上からそう書かれた垂れ幕を発見したとき、少し困惑した。京都にマンガ? なんで国際? 緑の敷地が広がっているのは、なぜ? 疑問はいっぱいあるのに追及することもなく、我家から徒歩10分の距離にあるミュージアムに、私は長く足を踏み入れなかった。多くの移住者がそうであるように、興味の矛先は、京都の神社仏閣、古代から連綿と続く祭に集中していたからだ。

とはいえ、前を通るたびに、気になってはいた。中はどうなっているのか。マンガの何がどんな風に展示されているのか。思い出すのは、米国ワシントンDCで私が中年留学中に誕生した「国際スパイミュージアム」だ。そこでは冷戦時代までの各国のスパイの歴史を展示している。国際政治における諜報活動の正当化、いや自慢する博物館といっていい。日本については、等身大の忍者のフィギュアが置かれ、真珠湾攻撃における日本人スパイについて言及されていただけだった。

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一昨年のある日、ようやくミュージアムに足を踏み入れた。真ん中あたりで大きな黄色いフェニックスが迎えてくれる。手塚治虫の「火の鳥」だ。京都の伝統工芸の技を駆使して作られたという。どのフロアも壁一面に本がびっしり。「マンガの壁」と呼ぶそうだ。都会のマンガ喫茶よりずっと広くて気持ちがいい。子どもたちに紛れて好きな本を手に取って読むことができる。

まずは少女時代に読んだ作品を探した。わたなべまさこ、一条ゆかり、山岸凉子、萩尾望都、美内すずえ、などなど。そして、我らが東村アキコの作品も棚に収っているではないか。講演で訪れたマンガ家の石膏で象った手も展示されている。米国LAで見たハリウッドスターの手形足形のようである。さらに驚いたのは、コロナ前の当時、外で寝そべって本を読む人がいたことだ。よく見ると、庭が人工芝になっている。なぜか――。

写真はコロナ以前の様子。以前は人工芝の上で寝そべって本を読む人がいた。 写真提供/京都国際マンガミュージアム

人工芝が敷かれた土地は、小学校の校庭だった。つまり、かつての龍池小学校が改修されてマンガミュージアムとして生まれ変わったのだ。現在も、大通りに面したエントランスと反対側には、小学校らしい佇まいが校門とともに残されている。地域の人々は、そこから出入りをし、校長室のほか3部屋をサロンや勉強会として使う。さらに校庭では地域住民が体操をしたり、運動会を開いたりしている。