グラビアでデビュー後、現在は演じ手として、コメンテーターとして、そして執筆者として様々な活躍をしている壇蜜さん。グラビアで壇蜜さんの艶やかさにうっとりしつつ、その言葉の切れ味の鋭さとのギャップに魅力を感じる人も多いだろう。

内館牧子さんのエッセイ集『別れてよかった 新装版』は、ギャップも見事に利用し、価値観の根底を覆してくれるような一冊である。例えば「男運」というタイトルのエッセイ。内館さんのいう「男運」は、「真面目で素敵な人と結婚したこと」ではない。貢がされたり、男にひどい思いをさせられたりすることを言うのだ。男と付き合ってハラハラするような深い経験をしたことを「男運がいい」と呼ぶのだ。おなじ物事でも、全く別の場所からだと、また違う表情が見えることがある。

男に頼らないほうが、素敵な恋に出会える。そんなことを教えてくれるエッセイの新版発売にあわせ、壇蜜さんが寄せた解説文は、自分として生きていくヒントを与えてくれるものだ。内館牧子さんから見た壇蜜さんの姿、そしてその「見え方」を壇蜜さん自身がどのように感じたのか――特別に全文掲載する。

壇蜜(だん・みつ) 1980(昭和55)年、秋田県生まれ。タレント。本名は支靜加(しずか)。日本舞踊師範、調理師など数々の資格を取得、多彩な職種を経験後に、29歳でグラビアデビュー。以後、テレビや映画などで幅広く活躍する。著書に『三十路女は分が悪い』『壇蜜日記』など多数。5月28日には出演映画『ハチとパロマの物語』が公開予定。
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「内館さんがあなたのこと書いてるよ」

「内館さんが、支靜加のことを書いているよ」。少し前の話になるが、秋田にいる祖母と会った時に言われて本を差し出された。本には付箋が貼ってあり、祖母が嬉しそうに「ここ」と見せてくれた。祖母は内館さんのファンであり、秋田生まれの自立した女性として尊敬していたようだ。

祖母は30代半ばで夫を病気で亡くし、以来ずっと独りで3人の子供を育てて生きてきた。役場の事務から水商売まで何でもやったという。水商売時代には他店に負けぬように差別化を図ろうとして、己の美貌を和装で飾り、得意のおでんをふるまいながらカラオケで盛り上げるという「おでんパブ」を発案した。未亡人と言われても自立はしていたのだろう。だからこそ内館さんに共感や尊敬の念を抱いていたようだ。2020年末に祖母は90歳で亡くなったが、あの世でも久々に再会した亭主には頼らずおでんパブを開業していそう。

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一方当時の私は派手な露出に過激な発言が功を奏したから、テレビや雑誌に出はじめた。ありがたいことに世間様に名前は浸透してきたものの、世に出たやり方がやり方だったこともあり、「下品」「教育上よくない」「身の程知らず」等という酷評のオンパレード。気持ちはすっかり「ふぇぇ」となっていた。とあるセレブタレントからは「赤線の娼婦なんじゃないかしら」と笑われて「赤線、久々に聞いたなぁ。青線じゃないだけましか……いや、ましなのか……?」とすっかりおかしくなっていた。

不思議なもので、こういう時は好評は耳に入らず、酷評ばかりが耳に入るものだ。しかし母や祖母は無職と就職を繰り返しフラフラしているうちに男にすがりつくように結婚なんかされては困るという考えの持ち主だったため、この妙な出世には何を言われても「がんばりなさい!」としか返してこなかった。母は今でも現役の保育士であるため、主婦になって幸せな娘というものが想像できなかったという。私も自分の財布に亭主の稼いだ金しか入っていない主婦の自分は想像できなかったが。専業主婦には向き不向きがあるのだ。専業主婦で上手くできている人も、それは才能。