2021.05.07
# 映画

映画『ノマドランド』はどれほどの傑作なのか…アカデミー賞圧勝が象徴するもの

立田 敦子 プロフィール

『ノマドランド』ができるまで

『ノマドランド』は、ジェシカ・ブルーダーによるノンフィクション「ノマド:漂流する高齢労働者たち」を原作とするフィクション映画だ。

リーマンショックの後の経済破綻により、家を失った高齢者たちが季節労働で生活費を稼ぎながらワゴン車でアメリカを横断する“現代のノマド現象”を取材したこのベストセラーに感銘を受けたマクドーマンドは、共同プロデューサーのピーター・スピアーズとともに2017年に映画権を取得した。

フランシス・マクドーマンド〔PHOTO〕gettyimages
 

そして、同年の9月に開催されたトロント国際映画祭でジャオの長編第2作目『ザ・ライダー』を観て、ジャオに白羽の矢を立てた。

2018年『スリー・ビルボード』で2度目のオスカーを手にしたマクドーマンドは、受賞のステージ上で、映画界における女性の連帯とインクルージョンを訴えたスピーチで感動を誘ったが、無名のアジア系女性監督にチャンスを与え有言実行した。

『ザ・ライダー』は、事故で頭に怪我を負ったロデオ乗りの男が、夢と折り合いをつけ、生き抜く様をサウスダコタの自然を背景に描いた“現代の西部劇”だ。主人公を演じているブレイディー・ジャンドローの実話に基づいたフィクション映画だが、ジャンドローを始め出演者はすべて素人だった。

ジャオは、『ザ・ライダー』で成功したこの手法を『ノマドランド』にも応用した。実際の“ノマド”たちをキャスティングし、その中にマクドーマンドを放り込んだのだ。

関連記事