性教育現場で生徒から出た鋭すぎる質問

私は元養護教諭で、現在フリーランスの性教育講師、思春期保健相談士として性教育の現場にいる。SNSで「にじいろ」のハンドルネームで情報配信している。

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性教育を始めたばかりの頃、中高生の妊娠や性感染症を防ぎたいという思いから、リスクや予防法など知識ばかり伝えていた。
しかし、ある日、中学3年生の感想に書いてあった質問にハッとした。

「性教育を受けても、知識があっても、妊娠したり性感染症になったりする人がいるのはなぜなんですか?」

とてもいい質問だと思い、翌週に行った高校で問いかけてみたところ、たくさんの答えが返ってきた。

「忘れてしまうから」
「自分は大丈夫、関係ないと思うから」
「本当は嫌だったのに嫌と言えなかったから」
「片方はいいと思っていたけど、もう片方はいいと思ってなかったから」
「そんな話ができる関係じゃなかったから」

そう、問題は知識不足だけではない。
他人事であったり、嫌と言える・話し合える対等な関係性でない関係性いわゆる「性的同意」をとれないコミュニケーションの問題だ。どれだけ性の知識があったとしても、対等な関係を築けなかったり、性的同意がとれなければ、性のトラブルや悪気なく相手を傷つけることは発生しやすくなる。このことに気づいてから、デートDVや性的同意の話を意識してするようになった。

学生たちの疑問や声に、性教育の本質を伝えることの難しさを感じる。photo/Getty Images

文科省から出た「生命(いのち)の安全教育」

デートDVや性的同意の話をすると、「気づくことができてよかった」と感想に書いてくれる子もいれば、「むしろそんな恋愛が(相手に縛られるような)してみたい」「強引な方が愛されていると感じる」という子もいる。性的同意についても「そんなことをいちいち確認するなんてしらける」と書く子もいる。

思春期になってから、恋愛や性に目覚めてから「同意が大事である」という話をしても遅いのだと感じる。子どものうちから繰り返し、“いい関係性”について、学び考える必要がある。

「好きな人やよく知っている相手だからこそ余計に嫌と言いにくい」という経験は、子どもだけでなく、多くの人があると思う。相手・周囲の空気に合わせるべき、本当は嫌なことでも我慢するべき、という学校教育や子育ての風潮はなかっただろうか。私は思い当たる節がたくさんある。

そして4月16日、性犯罪・性暴力対策のひとつとして、文科省から『生命(いのち)の安全教育』の教材が発表された。幼児向けから大学・一般向けまであり、各校や地域の状況等に応じて適宜内容の加除、改変も可能とのことだ。さっそく教材の中身に目を通した。私が実際に性教育で取り入れている内容も多くあった。

例えば、幼児期や小学校で学ぶプライベートゾーン(パーツ)の話。小学校高学年以上で学ぶSNSの話。中学校以上で学ぶデートDVの話。しかし、何回やっても上手く伝わらなかったり、難しいと感じる部分がある。「生命の安全教育」の教材や指導の手引きと合わせながら、気になる部分をまとめてみたい。

幼児、小学校低・中学年、小学校高学年、中学生、高校生、それ以上の人向けと年齢ごとにく分かれ、イラストを使いわかりやすく展開している。出典/文部科学省