相手の言葉が聞き取れない…「気が散る」のレベルを超えた、注意障害の苦痛

発達障害=「無理ゲー世界」体験記・3
鈴木 大介 プロフィール

当事者になったのちの僕は、年中「見つからない何か」を探しているようになった。

例えば駅構内の案内表示板から自分の行きたい場所が書かれたものを探し出すことができない。

立ち食い蕎麦屋の券売機で、たくさんあるボタンの中から「ざるそば」を探し出すことができない。

セルフのガソリンスタンドで、スロットがいくつもある操作パネルの中からクレジットカードを挿入する部分を探せない。

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パソコンのモニター上に表示されるフォルダの中から、お目当てのファイルを探し当てることもできなければ、もらった記憶のあるメールをメールアプリのスレッドから探し出すこともできない。

毎日毎日、生活のあらゆるシーンで、目の前にある「視覚情報群」が全部頭の中に入ってきて、そのあまりの情報量に、特定の情報を探し出せない。

しかも困ったことに、この探し物をしている間は、時計の進み方が平時とは異なっていて、5分のつもりが15分、15分のつもりが1時間といったふうに、溶けるように時間が経ってしまうのだ。脳もものすごく疲れて、ようやく探し物が出てきたときには、もうぐったり。頭の中で思考をまとめることも困難になってしまうのであった……。

お判りだろう。この「探し出せない」の理由は、耳にする音がすべて同じ音量で聞こえたのと同様に、目にする視覚情報がすべて均質(同じ大きさや同じ色)に感じられて、ひとつの情報を特定して注意を向ける=探し出すことができなくなってしまったから。

ということで、僕にとっての注意障害の「全部入ってくる」は、聴覚情報では特定の人の言葉に注意を向け続けることの困難だったのに対し、視覚情報においてはそもそも常時360度ビューのカメラ(全情報に注意が向いている)状態で、そこから特定情報に向けて視野と焦点(注意)を絞り込むことが困難という、ちょっと違ったタイプの不具合となって顕れたのであった。

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