哲学者が考える「独学」を効果的に実践するための“メタ方法論”

独学者のための「知性の取扱説明書」
山野 弘樹 プロフィール

人を「独学者」にするものは何か?

これまで、思索の方法、すなわち独学それ自体を可能にするメタ方法論について説明を行ってきました。

最後に、1つだけ問題提起を行うことで、本記事を締めたいと思います。

それは、「人を「独学者」にするものは何か?」というものです。

人は義務教育を終えると、テスト対策や受験勉強といった理由がない限り、自ら勉強をしなくなります。

さらに、余暇の時間を過ごす魅力的なコンテンツは世の中にあふれています。

人類はいよいよ、「学ぶ」という習慣を放棄してしまう局面に来ているのではないかと錯覚してしまうほどです。

ですが、それでも、一部の人たちが「独学」に励んでいます。

学び続けることを欲しています。

わざわざ勉強しなくとも生きていけるのに、どうして彼女ら・彼らは、独学に邁進するのでしょうか?

もちろん、一人ひとりが異なる目標に向けて、異なる独学をしているのだから、この問いに直接答えることはできません。(実際に話を聞いてみるしかありません。)

ですが、「人を「独学者」にするものは何か?」――この問いについてだけは、答えることができます。

それは「問い」です。

ここで言う「問い」とは、人間の根源的な欲望と共に、一生涯をかけて問い続けるような根本的な「問い」です。

人はいかに生きるべきなのか?(「幸福に生きたい」)

一人の人を愛し続けることはできるのか?(「本当の愛を知りたい」)

この世界に真理はあるのか?(「確実な知識を習得したい」)

人々の心を動かすプロダクトは、どのようにして生み出せるのか?(「普遍的な価値のある作品を創りたい」)

こうした問いこそが、人々を独学者たらしめるのです。

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独学者とは、たとえ最後の独りになっても、自ら問い続ける者のことを指します。

問いがあるからこそ、人は「既定の答え」の前に立ち止まるのではなく、「新たな問題」に向けて走り出すことができるのです。

すなわち、哲学をし続ける(根本問題に挑み続ける)からこそ、人は独学者で在り続けることができるのではないか――少なくとも、私はそのように考えているのです。

不確かな時代。終わりなき暴力の時代。不正義の時代。地球が死につつある時代。

21世紀とは、私たち一人ひとりにとっても、人類全体にとっても「転換点」となる時代です。

明日がどうなっているのかさえ、私たちは自信をもって断言することはできないでしょう。

ですが、未来が深い霧に覆われてしまっているからこそ、人は、そうした暗がりを照らす理解の光を追い求めてしまうのではないでしょうか。

そうした人たちにとって、本記事で解説した独学のメタ方法論が少しでも役に立つことを、私は切に祈っています。

学び続ける意志を絶やさない限り、理解の光は、あなたを「自己自身」の存在へと出逢わせてくれるはずです。

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