哲学者が考える「独学」を効果的に実践するための“メタ方法論”

独学者のための「知性の取扱説明書」
山野 弘樹 プロフィール

思索のためのステップ3――図解する

第3のステップは、「図解する」ということです。

第1のステップが「出発地点を設定すること」であり、第2のステップが「そこから実際に走り出してみること」であるならば、第3のステップは、「走ったコースの景色を再現VTRにまとめること」であると言えます。

ですが、実際どのように図解(=再現VTR化)をしていけばよいのでしょうか?

そのコツはずばり、「物語」化であると私は考えています。

抽象的なものを抽象的なままに語るのは、説明したことになっていません。

抽象的な議論を整理・要約・結合することができたなら、今度はそれを具体的な次元に落とし込む必要があります。「思索のためのステップ1――問いを立てる」において、すでに「具体性を探究する」という話が出ていたと思いますが、ここでも重要なのは、具体的に考えるということです。

具体的に考えるとは、少なくとも「何が・誰が(主体)」・「何を(対象)」・「どうするのか(働き)」という3つの要素を明確化するということです(ここにさらに、「いつ」・「どこで」・「いかにして」・「なぜ」といった具体化の要素が付け加わります)。

このように具体的に考えていくと、まるで一話分の物語が頭の中で再演されるような状態になります。具体的なイメージが頭の中を流れていく状態、これを私は「再現VTR」という言葉で例えています。

哲学の議論であれ、何であれ、「理解した」と言えるようになる段階とは、こうした「再現VTR」を頭の中でスムーズに再生できるようになる段階のことを言います。このとき、ノイズが走ったり(=使用する概念が不明瞭であったり)、時系列がおかしくなったり(=論理展開に飛躍が生じていたり)すると、聞き手は話についていけなくなります。当然、話し手も「理解できていなかった」ということが明らかになります。

思考の出発点を設定するために、問いを立てること。

実際に思考を展開するために、論証すること。

そして、具体的な理解を獲得するために、図解すること。

――これら3つのステップが揃ってこそ、「思索」という営みは実践されるのです。

(この3つのステップをバランスよく実践できる人こそが、いわゆる「地頭が良い人」と評価される人材なのではないかと思われます。なぜなら「地頭が良い人」は、質問の仕方が上手かったり[=問いを立てる力]、情報の整理が巧みであったり[=分節力・要約力・結合力]、人に物事を説明する能力に長けていたりする[=図解する力]からです。こうした情報処理能力やコミュニケーション能力の高さを実際の仕事や勉学に活かせる人が、「地頭が良い」という評価を受けやすいのではないでしょうか。)

思索の仕方(考え方)自体を考えるということ。それこそが、独学を行うための方法論の基盤となる、独学のメタ方法論なのです。

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