哲学者が考える「独学」を効果的に実践するための“メタ方法論”

独学者のための「知性の取扱説明書」
山野 弘樹 プロフィール

思索のためのステップ2――論証する(2/2)

続けて、「論証する」という思考力の第2・第3のフェーズを解説していきます。

B.【論証する思考力の第2のフェーズ――要約力】

「要約力」とは、分節化された個々の要素を組み立てていくことで、一つのロジックを再構成する技法のことを指します。

「要約が大事だ」と説く本は多いですが、その方法を教えてくれる本はなかなかありません。これはある意味仕方のないことで、要約という作業の肝は「ケースバイケース」になってしまうことがあまりに多いのです。

ですが、要約を行う際に大前提となる作業については、本記事ははっきりとした回答を出すことができます。

それが「分節化」です。良い分節なくして、良い要約はありえません。

チャンクをまとめていくことの最大のメリットは、そのチャンクを組み立てることで、自分の語り口に合わせて筆者の主張を再構成することができるということです。

要約とは非常に繊細な知的作業です。筆者の主張をそのまま繰り返しても要約にはなりませんし、自分の言葉しか用いない説明をしても要約にはなりません。あくまで筆者の主張を構成するパーツ(単語や概念)を整理しつつ、それらを組み立てていく(ロジックを再構成する)作業こそが、要約の極意なのです。

言わば、議論のレゴブロックを整理・収集する能力が「分節力」であり、そのレゴブロックを組み立てて建物を作る能力が「要約力」であると言えるでしょう。(分節力および要約力を磨き続けると、相手の話の要点を一瞬で理解できるようになります。また、「今の説明を聞いてどこが理解できなかったか」という点もすぐに見分けられるようになります。)

それでは、レゴブロックによって作られた建物を集めることによって、統一感のある住宅街を構成する能力とは何でしょうか?

それこそが、次から説明する「結合力」に他なりません。

(なお、要約を行う際には、別冊のノートに論点をまとめたり、本の余白にコメントを書き残したりすることを推奨します。再読を行う際にまず自分の要約から読むことで、「再び頭の中がまっさらな状態で読み直していく」という事態を防げますし、レポートや論文を書く際に重要な箇所をすぐに見つけることができます。)

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C.【論証する思考力の第3のフェーズ――結合力】

「結合力」とは、複数のロジックを組み合わせることで、一つの議論を体系的に構成する技法を指します。

一つのロジックを組み立てるということ、それは、ロジックを構成するチャンクを識別・整理(=分節)し、そのチャンクからロジックを再構成(=要約)することに他なりません。(本記事においては「ロジック」という言葉によって、おおむね一段落分に相当する議論のまとまりをさしあたり想定しています。)

ですが、1冊の本とは、当然何十、何百というロジックによって構成される集合住宅です。そのため、テクストを精読する際、分節・要約によって再構成されたロジック同士を結合していく作業が必要になります。テクスト全体を貫くロジックの連鎖を結合することができたとき、初めて「本書全体を理解することができた」と言うことができるのです。

こうした結合力は、レポートや論文などのロジカルな文章を書く際にも必ず必要になる能力です。たとえば学術論文は、典型的には「導入(問題提起)」→「根拠の提示(「節」に相当)」→「主張(結論)」→「今後の展望」といった仕方で展開されていきます。このとき、単に「導入」を書くだけでも、「根拠の提示」を書くだけでもダメです。これら一連の流れをロジカルに結合していくことで、初めて論文を構成することができるのです。

これは論文だけではなく、「企画書」や「報告書」等のロジカルな文章を書くときにおいても必ず求められる力です。こうした結合の際に意識すべきことは、複数のロジックを適切な「接続詞」によって結び付けていくことです。初歩的に思われてしまうかもしれませんが、正確にテクストを理解したり、読みやすい文章を書くためには、(「しかし」や「さらに」等の)接続詞を適切に用いることが何より重要になってくるのです。

これまで、論証する思考能力が兼ね備えておくべき3つのフェーズ(分節力・要約力・結合力)について説明をしてきました。

「問いを立てる思考能力」が思索のための出発地点を定める力であるとすれば、「論証する思考能力」とは、問題提起によって明示された出発地点から考え始め、筆者の主張を読み解き、そして自らの主張を展開するための力に他なりません。

思索のための方法(=独学のメタ方法論)は、これまで2つのステップ(「問いを立てる」・「論証する」)を解説してきました。3つ目のステップとして取り上げられるのが、「図解する」というステップです。

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