厚生労働省によると、2021年度の就職内定率は、大学(学部)は89.5%(前年同期比2.8ポイント低下)短期大学は82.7%(同6.6ポイント低下)、大学、短期大学、高等専門学校などでは89.3%(同3.1ポイント低下)大学等に専修学校(専門課程)を含めると88.0%(同3.8ポイント低下)となった。2020年度は短期大学以外前年比アップしていたことを考えると、新型コロナの影響は大きいことがよくわかる。

苦労して就職しても、ここ数年ずっと3年以内に離職する率は大学卒で30%、高校卒で40%を超えるという。もちろんステップアップするために、よりよい仕事を見つけることは大切だが、離職の理由が会社のやり方に起因していたらどうだろうか。そして理不尽だと感じても声をあげられないとしたら……。ジャーナリストの島沢優子さんが新卒社員たちに話を聞いた。

島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」今までの記事はこちら
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電車の遅延でも遅刻するな!

この春、愚息が社会人になった。
ただいま新人研修中。私たち50代親が新入社員の頃とは違って、新人研修がアウトソーシングされている会社が少なくない。そんな研修会社から来た講師の話を、椅子に座って1日中聴いたり、グループワークをしたり。
「つまらない話もあるけど、同期と話すのは楽しい」そうだ。大企業ではないけれど、人事担当者が「研修はどう?」とひとりずつ対面で話を聴いてくれるらしい。

「ただ、俺は適当にやってるんだけど、他の真面目な子は辛いっていうことがあってね」と話し始めた。
「真面目な子」が辛いのは、テーマが日替わりの「3分間スピーチ」だ。数十名いて、当てられるのは数人。順番に行う日が決まっているとか、興味のあるものを発表しようならわかるが、研修員からは「絶対に全員手を挙げるんだよ」と強制されている。

「翌日のテーマは発表されるから、家で内容を組み立てて、スピーチの練習してるんだって。毎日、しんどい、って。俺はまあ、当たったら適当にしゃべってやろうと思ってる。テーマはだいたいICTとか、AIとか日本の社会課題とかだから、日ごろ何かしら考えてることだし。でも、真面目な人や素直な人はさ、毎日辛いんだって」

ふーん。毎日やれば本人の勉強にはなるだろうけど、挙手を強制されるっておかしいね。強制される学びは、楽しくないし、何より実にならないね。

「そうだよ。俺ら、中、高はほぼ、勉強させるための強制ルールがあったよ。だから、逆に挙手させられるのっておかしい!って思わないんだよ。俺らの主体性は無視だから」
そう話した息子は、「ああ、気づかなかったなあ。辛かったんだなあ。俺、気づいてやれなくてさあ」と辛そうだった。

友人の娘さん、Aちゃんは入社したIT企業の研修にげっそりしていた。
「すっごいつまんないことで怒られるのがストレスなんです。本当にストレス。バカみたいなことで声を荒げてくる。ホント、ストレス」

「ストレス」を連発する彼女によると、研修が始まってしばらくしたころ、会社の最寄り駅の沿線で電車の遅延があった。数人が遅刻して部屋に入ってくると、講師がまくしたてた。
「電車遅延でも遅刻するな!」
「電車遅延を想定して、出てこい!」
50代後半くらいの男性講師は数分間、怒り狂っていた。
「あり得ないよ。遅刻するなんて!」

その日のランチタイム、居合わせた者たちで「理不尽すぎるよ」「おかしいよね」と言い合った。Twitterで「電車遅延 怒られる」と検索したら、「電車遅延で遅刻したら上司に猛烈に怒鳴られた」とつぶやいている人が複数いた。
それでも、研修員の男性に異議を唱える者はだれもいなかった。

電車の遅延で遅延した電車に乗っていたら怒鳴られる…それを見越してもっと早く来いということなのだろうが、あらゆる可能性を考えた場合どれくらい前に出社しろというのだろう(写真の人物は本文と関係ありません) Photo by iStock