学ぶべきはビジネススクールでなく家計簿
ここまで聞くと、実現には相当な知識と経験が求められると思うだろうが、そんなことはない。実は中小企業の方が実現しやすい環境にある。この手法はビジネススクールや大手企業の財務会計部門で働く必要はなく、家計簿をしっかりつけるほうが実現できる。これを筆者は「母ちゃんCFO」と呼んでいる。
全国に子供がいる世帯数は約1170万世帯ある。多くの母ちゃんは家計簿で資金を管理している。たとえ夫の収入が上がらなくても、手元にお金を残そうとする。将来の学費や住宅購入といった大きな出費に備える必要があるからだ。
そして投資となる教育投資(子供の習い事)をコロナだと言ってすべてやめさせた母ちゃんは少ないだろう。特別定額給付金(国民1人あたり10万円)はしっかり将来のために残しつつ、一部は使うなど戦略的に考えている。

この考えで会社の「家計」を預かれば、デキるCFOになれる。企業会計になると、簿記や税効果の考えが邪魔をしてしまう。母ちゃんCFOにはその邪念が少ない。手元資金にいくら残せるのかしか考えない。
コロナ禍になって「現金が大事(キャッシュイズキング)」、つまり売上拡大の追求も大切だが、手元資金の重要性に気づいた1年となった。経営幹部にBSで考えるための研修を導入する先進企業も出始めている。
ビジネスパーソンもこのような視点をもって自社の財務に興味をもつとマネーリテラシーが高まる。学ぶべきは家計を預かる母ちゃんだ。