儚くも濃密な2.5次元の世界

たとえば舞台『刀剣乱舞』の三日月宗近役を、まさしく神様のように圧倒的な存在感と神秘性でもって演じる鈴木拡樹、対して山姥切国広のこれぞ人間そのものというようなナイーブさと強さを絶妙なさじ加減で見せてくれる荒牧慶彦などのプロフェッショナルを得て、漫画やアニメのキャラクターは「2.5次元」という舞台で生き生きと動きはじめた。

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そのいっぽうで、あらゆる「推し」ごとのなかで、もっとも儚く短命なのもまた、「2.5次元」だ。生身の人間が、絵に描かれたキャラクターになるのだから、そもそもが無茶で無謀なこころみというもの。人は歳をとるし、体力は衰えるし、ファンの思いはあまりに気まぐれに移り変わる。

昨日、大絶賛されたものが、今日は「解釈違い」としてそっぽを向かれてしまうこともある。アイドルのようにもてはやされることもあるけれど、キャラクターという縛りがあるぶんアイドルよりも不自由で、時にはキャラクターという指針があるからこそ強い。それが「2.5次元」のおもしろいところだ。

そんな「2.5次元」のキャラクターたちが、いわゆる普通の生身のアイドルと違うのは、舞台上にしか存在しないところだ。本物のアイドルならば、舞台が終わっても次のライヴや雑誌・テレビ等の露出を楽しみにすればいい。しかし、「2.5次元」キャラクターの命は1週間から長くて数ヶ月、いったん舞台の幕が降りてしまえばもうどこにも存在しなくなる。

もともとアイドルはほんのひととき若さを燃やす期間限定のものであるが、それを究極まで突き詰め、ぎゅっと濃縮された人生を生きるのが「2.5次元」キャラクターなのだ。