気づいていますか? 現在の格差が「世界恐慌なみ」だということに

【特別鼎談】宮台真司×白井聡×斎藤幸平
宮台 真司, 白井 聡, 斎藤 幸平 プロフィール

斎藤 このところ「上級国民」と「下級国民」という言葉が定着しています。国内の市場が縮み、安定した仕事も減る中で、日本人の人心が荒廃しているのは確かでしょう。資本主義社会では、経済成長が望めなくなると労働者の賃金を下げたり、非正規化やリストラで経費を削減する以外に方法がなくなる。自分だけ競争に勝ち残りたい、他人など知ったことではない、という人が増えるのも無理はありません。

労働といえば去年、コロナで世界的に流行っている「ウーバーイーツ」の配達員を私も体験しました。一見「時間や場所に縛られない自由な働き方」のように思えますが、配達員は労働基準法の範囲外なので最低賃金が適用されず、仕事が割り当てられるかどうかもアプリの指示次第。誰かと言葉を交わすこともありません。

しかし個人がバラバラに生きるいまでは、こうした労働形態に「実は搾取されているのではないか」という疑念を抱く人もあまりいないのだろうな、と実感しました。

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心が荒んでゆく

白井 ミクロでは、痛みや苦しみを誰とも共有できず、グローバル企業のやりたい放題に振り回される個人が増えている。一方マクロで見ると、国家間競争が激化し、日本の地位も相対的に下がってゆく。この20年ほどで一気に人心が荒んでしまった背景には、その両方が加速していったことがあったと思います。

宮台 第一部で述べた「戦後はたまたま格差の少ない時代だった」という話に関連しますが、大規模な国家で国民全員が仲間意識を維持することは、もともと無理なのです。進化心理学によれば、人が「仲間」だと思える範囲は150人、どんなに大きくても2万人です。

なのに、「国民は仲間だ」という国民国家の枠組みが続いたのは、危機のたびに戦争をするから。ナポレオン戦争の教訓によって、各国は「傭兵ではなく国民兵を組織しなければ戦争に負ける」と気付き、19世紀半ばから国民国家ができた。それがやがて「国民国家を維持するために戦争をする」という倒錯に至りました。アメリカが繰り返し戦争を仕掛けるのも、国内の巨大製造業のためです。

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