緊急座談会「 東京五輪は、やっぱり中止すべきか」〜騒動が示す日本の“劣化”ぶり

宮台真司×小笠原博毅×西田亮介
週刊現代 プロフィール

小笠原 実は、いま東京五輪の利害関係者の中で一番冷めているのがスポンサー企業です。

象徴的なのが、これはコロナ前から始まっていた動きですが、マクドナルドやバドワイザーといった大手がこの大会から公式スポンサーを降りたこと。

日本でも、スポンサー企業は五輪関連のPRやCM放映にかなり慎重になっている印象を受けます。

 

西田 企業は損得勘定に最もシビアですから、この状況で東京五輪を強くプッシュすると、むしろ損をしてしまうと見ているのでしょう。

コロナ前には「東京五輪前後にインバウンド客は年間4000万人に達する」と言われていましたが、それを見込んだ投資も無駄になる公算が大きい。

それならば早めに損切りしよう、と企業はドライに考えている。むしろ未練が大きいのは、政治家や一般国民のほうでしょう。

小笠原 ひとつ心配なのは、東京五輪には無数の中小企業も下請けや孫請けとして関わっていることです。

彼らは開催の是非は別として、経営のために会場整備をしたり、バッジやTシャツを作ったりしている。

資本力のある大手企業は「儲かりそうにないので撤退します」と簡単に言えるけれど、中小企業はそうはいかない。中止によるしわ寄せを厳しく被るのは、相対的弱者です。

宮台 その通りですが、一方でこれを機に、そもそも五輪のような「祝祭」に頼るビジネスモデルから脱却するべきだろうと思います。

マクドナルドの撤退は象徴的です。アメリカの社会学者リッツァの説によれば、五輪が巨大化して世界的な祝祭になった背景には、労働の「マクドナルド化」つまりマニュアル化があった。

仕事がマニュアル化されるにつれ、労働者は働く喜びを感じられなくなり、埋め合わせとして祝祭を消費し憂さを晴らすと言います。

その意味で、「マクドナルド的労働」と「五輪的祝祭」は資本主義の両輪です。その構図がコロナで崩れました。

今後しばらくは祝祭的消費による憂さ晴らしができないので、人々の生き方も見直されるでしょう。

そんな流れの中、「五輪で景気浮揚」という発想自体が、日本の劣等性を世界に印象づけることになる。コロナによって、五輪はその役割を終える可能性さえあるのです。

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