「IZ*ONE」とは一体何だったのか…2年半で見えた日韓アイドルの「決定的な差」

松谷 創一郎 プロフィール

K-POPとJ-POPは融合したのか

2年半前、筆者はIZ*ONEの誕生を受けて、「『PRODUCE 48』は“JK-POP”の生みの親になるかもしれない」と記した(連載第4回)。K-POPとJ-POPの境界がより取り払われ、両者の特長が融合する化学反応を予想したのである。もちろん、それは希望的観測でもあった。閉鎖的かつ保守的な日本の音楽とアイドル状況に、IZ*ONEが大きな風穴を開ける存在になってほしいという願望を“JK-POP”と表現した。

だが、現実的にはそうならなかった。日韓で完全にべつべつのプロデュースとなったからだ。これはおそらく番組開始時からの契約だったのだろう。韓国はMnetを運営するCJ ENM傘下のプロダクション、日本はAKB48グループを運営するAKSと秋元康だった(後にAKSはAKB48の運営を分社化し、社名をヴァーナロッサムに変更)。韓国語曲は韓国チームが、日本語曲は日本チームが創る体制は、最後まで貫徹された。

しかし、逆にそれはプロデュースにおける日韓の姿勢と力量の違いを鮮明にさせた。メンバーは同じ12人でも、楽曲やダンスなどに明らかな差異があったからだ。

結論から言ってしまえば、そこでは日本語曲の水準の低さが浮き彫りとなった。日韓で求められるアイドル像やビジネスモデルが異なるとは言え、素材が同じゆえに比較を免れることはできない。ファンからは日本語曲への不満が噴出した。

より具体的に言えば、日本語曲はサビになったら全員で合唱し、ラップは(活動後期まで)ほぼなく、歌詞は日本デビュー曲の「好きと言わせたい」のように思春期的な恋愛模様ばかり。そのコンセプトは従来のAKB48グループと大差なく、メンバーたちの個性もまったく活かすことができていない。「IZ*ONEの無駄使い」と酷評するファンも少なくなかった。実際、全体の活動の30~40%を日本語曲に費やしたことを考えれば、限定的な時間を有意義に使えたとは言い難い。

 

視聴/再生回数を見れば一目瞭然

こうした楽曲の力は、YouTubeやSpotifyの視聴/再生回数にもはっきりと表れている。CD売上が人気を測る指標として過去のものとなった現在、視聴回数をオープンにしているインターネット配信は曲の広がりを見る基準として機能する。

韓国語曲は、デビュー曲「La Vie en Rose」がYouTubeで約1億5000万回視聴されているのを筆頭に、昨年12月発表の「Panorama」まですべて5000万回を超える。K-POPではMVが2000~3000万回視聴されてやっとヒットとして認識され、BLACKPINKやTWICEでは億を超えるのが当然の世界だ。

しかし日本語曲は、最高が「好きと言わせたい」の約2600万回にとどまる。他の3曲は2000万回に達してもいない。曲単位では、「好きと言わせたい」以外はヒットと言い切れない水準だ。

Spotifyでは、YouTube以上に人気の差が出ている。日本語曲で1000万回再生に達したものはない。音楽だけでは、MVよりも訴求しないということだ。

こうした結果を踏まえると、日韓のYouTubeチャンネル(韓国は音楽レーベル、日本はIZ*ONEのみ)などによる差とは考えにくい。コンテンツ(音楽)ではっきりと評価が分かれたと見るほうが妥当だ。

これは極めて興味深い事例だ。何度も音楽(MV)を聴きたい(観たい)と思う魅力のグローバルな伝播が再生回数に反映するとすれば、日本語曲は韓国語曲の足元にも及ばなかったことを意味する。

結局、日韓でべつべつにプロデュースされたIZ*ONEは、“JK-POP”などになることなく、ふたつの顔を並行させたまま終わった。3月13・14日に行われた「IZ*ONE ONLINE CONCERT [ONE, THE STORY] 」でも、過去の日本語曲はひとつも披露されなかった。この日のために創られた秋元康作詞による日本語のバラード「Lesson」は歌われたが、作曲は韓国人なのでおそらく韓国サイドで制作されたものだ。

コンサートはそれぞれコンセプトがあるので過去の人気曲でも披露されないことはある。だが、集大成となる最後に日本語の代表曲がすべて外されたのは象徴的な事態だった。しかも、ファンの多くはそれに不満を表さないどころか、当然のことと受け止めていた。

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