「IZ*ONE」とは一体何だったのか…2年半で見えた日韓アイドルの「決定的な差」

松谷 創一郎 プロフィール

最大の特長と魅力

不運に見舞われながらもIZ*ONEは大ヒットを続けた。それは判官贔屓的な支持が拡がったわけではなく、手堅い人気を維持するだけのパフォーマンスがあったからだ。

彼女たちの最大の特長は、12人の編成にある。これはK-POPグループのなかでもかなり多い部類に入る。人数の多さはプラスに働くばかりではない。ひとつの曲のなかでもメンバー個々のパートが減るため、埋没する可能性もあるからだ。だが、IZ*ONEは大人数であることをしっかりとアドバンテージとした。

〔PHOTO〕gettyimages
 

その最大の魅力は、きわめて精緻に練られたダンスにある。メンバーは目まぐるしくフォーメーションを変えて、ダンスをハーモナイズしていく。これまでK-POPは、たとえば少女時代が見せたように一糸乱れずシンクロナイズしたダンス(韓国語で「カル群舞」と呼ばれる)で注目されてきた。IZ*ONEはこうした技術的な側面はもちろんのこと、大人数を活かしたダンス構成が極めて秀逸だった。

それがわかるのは、たとえば「幻想童話(Secret Story of the Swan)」のダンス動画だろうか。センターのヴォーカルパートは次々と入れ替わり、4人ずつ3グループで左右に分かれたり、あるいは前方7人の後ろから残る5人が段階的に加わったり、12人が縦横無尽に動いてフォーメーションを変え続ける。サビ部分で全員の“カル群舞”=ユニゾンが映えるのも、それまでの複雑な展開があるからこそだ。

IZ*ONEのダンス傾向は、この5年ほどK-POPを席巻してきたガールクラッシュ(女性が憧れる女性像)の力強さとは異なる。デビュー曲「La Vie en Rose」のときから、IZ*ONEはたおやかな腕の動きや細かい指使いを多用して優雅さを魅せてきた。ヒップホップやR&B、最近ではディスコファンクが目立つK-POPのなかで、その上品なダンスはモダンバレエを思い起こさせる類のものだ。

なかでも独特だったのは、MV曲ではない「Highlight」だ。ミドルテンポのこの曲は、最大の見せ場がダンスそのものだ。しかもそれは決して複雑ではない。メンバー全員が両腕を広げ、身体全体をゆっくりとねじるだけ。シンプルなその動きは極めて小さくゆっくりとしており、それまで続いていた動の時間が急に止まる。いわば、“動かないダンス”だ。

ダンスと言うと、一般的には前述したような“カル群舞”や激しい動きばかりが注目されるが、曲全体で緩急をつけるこうしたアイディアは秀逸だ。非常に小さい動きではあるが、12人が横に並んで見せることでこのダンスは威力を発揮する(同じ『PRODUCE~』シリーズの日本版からデビューしたJO1も、デビュー曲の「無限大(INFINITY)」で似たアプローチをしている)。

日本発のアイドルグループでは、こうした工夫はあまり見られない。たとえばAKB48や坂道グループなど日本のアイドルは、シンプルなフォーメーションでメンバー全員が最初から最後までユニゾンで踊り続けるものが多い。それはパフォーマンスにコストをかけないビジネスモデルの結果でもあるが、“一致団結”ばかりを目指すヨサコイソーランの悪癖にも見える。

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