決行の日、でも…
いよいよ逃げ出す日が迫っていた。しかしモエさんは、直前まで逃げようかやめようか決められなかったと言う。貯金も尽きかけていた。けれどそのとき友人が仕事を依頼してくれて突発的にまとまったお金が手元に入ったのだ。
「これがあれば逃げられる」
それから夜行バスのチケットを予約して夫には黙って家を出た。しかしいざバスのロータリーまで行ったところで、夫からメールが届いた――。
「今どこですか?」
「実はカギをなくして家に入れなくなってしまっている」
そのメールを見てモエさんは「早く帰らなきゃ」とパニックを起こしてしまった。でもそこで一応近隣に住む友人に電話をした。夫が家に入れないみたいだから今日は逃げるのをやめようか、と。すると友人は「落ち着いて あなたのマンションの部屋 電気がついているわよ」と教えてくれたのだ。
鍵をなくしたというのは嘘だった。それを聞いたとき、モエさんは心底ゾッとしたという。
それからモエさんは夫とは一切会わず、離婚調停を始めた。35歳で結婚、41歳のときに逃げ出し、結局6年を費やすこととなったのだった――。
いかがだろうか。自覚しにくいモラハラは、思った以上に身の回りにあふれている。あなた自身のSOSや、周囲の発するSOSにぜひ耳を傾けてほしい。