グリコ森永事件の主犯・キツネ目の男の「声」を聞いた!

「昭和最大の未解決事件」犯人グループに拉致された元自衛官の告白
岩瀬 達哉 プロフィール

「大同門」の事件から5年ほどして、兼田は会社を辞めた。母親が人工透析を受けなければならなくなり、病院に通うための送り迎えで勤務が続けられなかったからだ。その後、転職先の同僚女性と結婚し一男をもうけた。その子供が1歳になるかならないかの頃である。乳母車に赤ん坊を乗せ、夫婦で自宅近くのマクドナルドに出かけたときのことだ。

彼女のことしか見えなくなった

「妻がレジで勘定してハンバーガーが出てくるまで、少し離れた場所で待ってたときですよ。乳母車の赤ん坊をあやしながら、ふっと目をあげると、こっちをじっと見ている女性がいた」

彼女だった。デート中にかい人21面相に襲われ、拉致されたかつての恋人である。彼女のそばには、夫と、夫に手をひかれた幼い子供がいた。目と目があった瞬間、兼田は、彼女の周りが白くぼやけていき、人で込み合う店内で彼女だけしか見えなくなった。

「お互い家族と一緒やったから、声をかけることもできなかった。向こうも同じ気持ちやったと思うよ。あの一件で人生変わってしまって……」

 

事件に巻き込まれた日からすでに8年の歳月が経っていた。まったく予期せぬ場所での、偶然の再会だった。しかし二人は一言も言葉を交わさず、家族づれで賑わう店をそれぞれ後にした。

           (講談社刊『キツネ目 グリコ森永事件全真相』)より抜粋

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