グリコ森永事件の主犯・キツネ目の男の「声」を聞いた!

「昭和最大の未解決事件」犯人グループに拉致された元自衛官の告白
岩瀬 達哉 プロフィール

カローラには3億円以外に、トランクにひとりの捜査員が潜んでいて、300メートルほど走ったところで車をエンストさせた。トランク内に引っ張ってあるケーブルのコンセントを抜くと、エンジンがかからない仕掛けが施されていたのだ。

このとき、兼田は「なんで、止まるねんや」と怒鳴っている。そして苛立ちもあらわにエンジンキーを忙しく何度も回している。再びかかったエンジンは、100メートルほど進んだところで、またエンストした。その瞬間、数人の捜査員が飛び出してきて車を取り囲んだ。なかのひとりは両手で拳銃を構え、兼田の額に照準を合わせていた。

助手席のドアが乱暴に開けられ、捜査員がエンジンかけろと怒鳴りながら乗り込むと、エンジンは再びかかり、左前方の脇道に入れと命じた。兼田は、このとき、「彼女、つかまっとんねん」と言ったことを、いまも鮮明に覚えている。

 

買ったばかりの車だった

屈強な捜査員に両脇を固められたまま、警察車両での事情聴取となった。捜査員がグリコとの関係を質問しても、「知らん、俺とちがうって! グリコなんか知らんよ」と繰り返し、ことの経緯を必死で説明した。恋人とデートしていたら襲われ、車を奪われた。さっき「大同門」まで行った車は自分のもので、彼女がいまも犯人に拘束されている。

捜査員は、だったら車のナンバーを言ってみろと声を荒らげたが、兼田は答えられなかった。3日前に、寝屋川の中古車センターでそれまで乗っていたブルーバードをチェイサーに買い替えたばかりだったからだ。

「テメエ、自分の車のナンバーも言えんのか」

怒鳴る捜査員を制し、右脇を固めていた目の鋭い年配の捜査員が言った。

「目ぇが、ちがう」

普通、逮捕された犯人が見せるふてぶてしさや、意気消沈ぶりがない。興奮状態がおさまらず、発する言葉には切迫感があった。しかも顔には殴られた痕があり、左の前腕は10センチ以上切れていて、服は血で染まっていた。腕の傷痕は、いまも残っている。

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