伝説の事件記者がはじめて語る「グリコ森永事件」6人の犯人像〈後〉

元毎日社会部・吉山利嗣氏✕岩瀬達哉氏
岩瀬 達哉 プロフィール

吉山 江崎社長が水防倉庫から自力で脱出したあと、兵庫県警と大阪府警がそれぞれ江崎社長に事情聴取しているけど、聴取内容の突き合わせさえやっていないんですよ。

岩瀬 兵庫と大阪は仲悪いですからね。

一方でもう一つ関係ないという説もあってですね。取材しているなかで聞いたんですけど、「グリコへの恨みは関係ないんや」と。じゃあなんでですかと聞いたら、グリコの社長の家のことをある程度知っている人なら、一部上場企業なのに警備が全然されていないから、拉致できると分かった可能性がある、と。

 

メッキ工場こそがカギだった

岩瀬 グリコの事件の前年に、ハイネケンの社長が拉致されて何十億円か要求された事件があり、企業の要人誘拐の時代が来るんじゃないかと当時の新聞にも書かれていたんです。

トラウマづくりのために一回拉致するんだけども、学生時代に全共闘の活動家であった作家と雑談したときにこの話をすると、「俺たち全共闘のときはしょっちゅう拉致していたから人を拉致するのは平気だ」と言うんですよ。犯人たちも、年齢的には全共闘世代なんですよね。

恨みがあってやったというよりここはやれる、やりやすいと。それをマスコミに伝えて騒ぎを大きくして食品メーカーを連続恐喝して金をとっていくことを計画していたんじゃないかという説もあるんです。

いろんな説のなかで私が一番おかしいなと思ったのは北朝鮮スパイ説で、こんなに統率のとれた動きができるのはやっぱり特殊訓練を受けた人間だとか。犯人は最初、金塊100キロと10億円を要求しますね。キャッシュじゃなくて金塊を欲しがるのは北朝鮮だと。そこで滋賀・大津の廃品回収業者がAランクの捜査対象になった。私が会いにいったら、その人は北の出身ではなくて、南からの人だった。

捜査報告書には北朝鮮の出身と書かれているんですけど、実際に取材すると「ウチ南でっせ」と言っていましたね。

それとメッキ工場をもうちょっと調べておけば面白かった。青酸ソーダと濃塩酸というのはメッキの主要な材料ですからね。

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