東芝の悲惨すぎる末路…なぜ“外資の草刈り場”となってしまったのか

車谷暢昭氏は「ポイ捨て」され…
伊藤 博敏 プロフィール

物言う株主のアクティビストを排除し、中長期的な視野で事業を再建、その間、代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)として権力を掌握、将来、財界トップの経団連会長を目指す――。

そんな車谷暢昭氏の野望は、リストラ強化で痛めつけられた社員の反発、古巣のファンドCVCキャピタル・パートナーズを使った買収提案を、「保身」と見破った永山治取締役会議長らの嫌悪などによって敗れ、車谷氏は社長退任を余儀なくされたばかりか、経済同友会副代表幹事を辞任するなど、経済界での居場所を失った。

車谷暢昭氏〔PHOTO〕gettyimages
 

CVCは事実上、撤退したものの、火をつけられた米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、カナダのブルックフィールド・アセット・マネジメント、旧東芝メモリホールディングスの買収で実績のある米ベインキャピタルなどが、新たな買収提案を仕掛けてくることが考えられる。

東芝経営陣は、上場維持が企業価値を高めるという判断を下したわけだが、その際、車谷氏が呪縛から逃れようとしたエフィッシモキャピタルマネージメントなどアクティビストは、「1株5000円以上」というCVCの当初提案以上の株価を求めよう。

そうなると、17年11月、ファンドを呼び込む6000億円増資を実行したのは、車谷氏の退任で、社長に返り咲いた綱川智氏であり、その就任会見で「企業価値を上げる目的は我々も同じ。しっかりお話していきたい」と述べた綱川氏は、「ファンドの出口」を提供すべく株価を上げねばならず、考えられるのは「切り売り」だ。

綱川氏が前社長時代に行ったのは、出身事業分野の東芝メディカルシステムをキヤノンに6655億円で売却、虎の子のNAND型フラッシュメモリーのある半導体部門を東芝メモリ(現キオクシアホールディング)として切り離し、2兆円で売却したことだった。

1兆円をどぶに捨てた米ウェスチングハウス(WH)の失敗をきっかけに東芝の凋落は始まり、何かといえば官僚が無責任に口先介入、資金不足につけ込んで侵食した外資が揺さぶりをかけ、経営陣に当事者責任が見られないまま、医療、半導体と付加価値の高い事業分野から切り売りしていった。その結果、鉄道インフラ、水力・火力発電、エレベーター、レジシステムなど多彩だが成長分野の核になる事業がない、という将来に展望を描けない企業となった。

日本の高度経済成長を牽引、経団連会長などを輩出した名門の没落原因は、経営者に人を得なかったことに尽きるが、15年7月、粉飾決算の発覚でいっせい退任した3社長の責任追及を徹底、ウミを出し切れば今とは違う形で再生できたかも知れない。だが、会社は民事訴訟で責任を形だけ問うたものの、曖昧に処理、それを許した官邸と検察の罪と合わせ、東芝の惨状は日本の惨状でもある。

 

名誉を求め保身に走った歴代社長たち

東芝は、経営者が社外に栄誉を求め、そのために人事が歪む特異な会社だった。

96年から2期4年、社長を務めた西室泰三氏は、「肩書コレクター」の名の通り、会長時代に経団連副会長を務め、政府審議会関連の役職を歴任、東証社長、日本郵政社長と渡り歩いた。最も望んだ経団連会長ポストには行き着かなかったが、社長ポストを譲った岡村正氏が、00年から5年の変速的な形で社長を務めたのは、西室氏が経団連会長狙いで必要条件の会長職(経団連会長は現役会長が不文律)にとどまったからだ。

同じようなことを05年から09年に社長を務めた西田厚聡氏も行う。選択と集中を掲げ、WHを6210億円の高値で買収、「決断力のある経営者」と評価された西田氏は、原子力ビジネスを強化する目的で、後継社長に原子力畑の佐々木則夫氏を選んだ。岡村氏は日本商工会議所会頭職に就いており、西田氏も「名門東芝」の会長に相応しく、財界活動に力を入れ経団連副会長に就任するが、岡村氏の存在がネック(同一企業から2人の財界トップは出せない)となり、経団連会長にはなれなかった。

西田厚聡氏〔PHOTO〕gettyimages
 

そんな西田氏を差し置いて、佐々木氏は社長時代から経団連会長の指定席である経済財政諮問会議の民間議員となり、13年2月、経団連副会長に内定すると、その直後の人事で、東芝は同年6月からの社長に調達畑の田中久雄氏を選び、西田氏は会長留任、佐々木氏を「中二階」の副会長とする人事を発表した。明らかに財界主流を歩こうとする佐々木氏への嫉妬。この時の記者会見で、西田氏は「ひとつしかやってこなかった人に幅広い東芝の経営は見られない」と、佐々木氏を批判、佐々木氏も「西田さんだってパソコンだけ」と、応酬、2人は不仲を隠さなかった。

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