湘南進出で地獄、バズった直後に立ち退きと病が

そこで2011年、関東で勝負しよう、と決断。湘南に2店舗目をオープンしたのですが、東日本大震災の影響もあり、来客数は1日に1〜2組。本当に地獄を見たし、立ち直れないくらいの痛手を負い、1年半で退去しました。

これを機会にと沖縄の店も引き払い、 2013年、東京・学芸大学の駅近の古民家で「A WORKS」として再スタート。東京への進出には、湘南での悔しさもありましたが、もちろん自信もありました。当時は東京でもチーズケーキの専門店は珍しく、うちにはすでに20種類ものフレーバーがあり、取材を受けるたびに「東京ならウケる」と必ず言われていたからです。

インスタグラムを意識し始めたのはこの頃からです。学芸大学の店のオープン3周年で作った「レインボーチーズケーキ」。それまでカラフルだった壁を白く塗ったことから「ケーキをカラフルにすれば、写真に撮った時に映えるのは?」というアイディアから生まれた商品です。これがSNSでバズってTVやWEBメディア、雑誌でも取り上げられるようになり、店の売り上げは絶好調に。

レインボーチーズケーキは、美しい層を作るために生地の硬さのバランスを考え抜いた船瀬さんの試行錯誤があって生まれた。見た目のインパクトと繊細なプレーンチーズケーキの味わいのギャップに、食べた人はみんな驚く 撮影/嶋田礼奈
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ところがせっかく順調だった2018年、店の大家さんから「立ち退いてください」というまさかの通知が。それだけでも目の前が真っ暗だったのに、同時に、プライベートでも深刻な問題に襲われたんです。

耳の調子がおかしくて病院に行ったら「聴神経腫瘍」という診断。つまり耳の近くにできた脳腫瘍で、放置して大きくなった場合、脳に障害が起こるかもしれないということでした。実は今も左耳は聴こえません。このときはもう人生のどん底でした。