伝説の事件記者がはじめて語る「グリコ森永事件」6人の犯人像〈前〉

元毎日社会部・吉山利嗣氏✕岩瀬達哉氏

1984年3月、グリコの江崎勝久社長が自宅で入浴中に拉致されたところから発生、そのまま未解決に終わった「グリコ森永事件」。吉山利嗣氏は大阪府警を十数年にわたって担当し、「最後の事件記者」と言われる毎日新聞社会部のエースだった。NHKドラマ「未解決事件file.01 グリコ・森永事件」では池内博之演じる準主役のモデルとなっている。(編集部)

岩瀬 この本(『キツネ目 グリコ森永事件全真相』)の取材には足かけ12年かかりましたけれども、何度も諦めて、止めようかなと思ったことがあったんです。そのたびに吉山さんが「もうちょっとやったほうがええで」「ここに行ったら」とご指導いただいて、そのおかげで打開できたことが何度もありました。本当にありがとうございました。

 

犯人の指紋が消えていた

吉山 私は、この事件は初動捜査がおざなりになって、それがずっと尾を引いて未解決につながったと見ているんです。事件発生当時、大阪府警は、「暴力団とも関わりのある総会屋がらみの犯行で、すぐに解決する」という考えだったんです。

子どもと入浴中のグリコの江崎勝久社長を、銃で脅して裸のまま連れ去っている。一見すごく荒っぽい犯行で、府警の捜査方針は、犯人を現場で現行犯逮捕するというものでした。そのために基本通りの初動捜査をしていなかったんです。

岩瀬さんが本で書いているように、犯人たちが西宮市役所で、江崎社長の住民票をとっていたことが発生から2年後の捜査で分かりましたが、そのときにはすでに指紋も消えていました。

岩瀬 まさに今回取材したら、大阪府警捜査一課の元捜査員たちが「初動捜査がまずかった」と言うんです。住民票なんて初動捜査の段階で調べておかなければいけなかったと。

江崎社長拉致事件翌年の1985年、大阪府警の刑事部長が広瀬権さんに交代したとき、部下に「住民票の捜査やったのか」と聞いたら「やってまへん」と。「こんなの初動じゃないか、早くやれ」と指示して、そこではじめて犯人グループが住民票をとっていたことが分かった。

吉山 そうなんです。

岩瀬 広瀬さんは厳しい人でしたが、捜査指揮はしっかりしてたと評価していました

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