自分よりも早く歳を取るペットの「老後」

以前、寝たきりになったゴールデンレトリバーのいるお宅へ、毎週往診に通っていたことがある。その子は食欲旺盛で排便も問題なかったのだが、自力排尿ができなかったため、やむを得ず尿道カテーテルを留置し、毎週その交換をしに行っていた。

その子は巨大な胆石があったものの、他に大きな病気もなく、結局1年近く往診を続け、最後は老衰に近い形で亡くなった。おばあちゃんが主にお世話をしており、丸々と太った子だったので、30キロほどある体をひとりで持ち上げることもできず、介護はとても大変そうだった。

それでも体の下に敷いたシートを頻繁に変えて清潔に保ったり、脇や股など擦れる場所の皮膚トラブルをケアしたりと、きめ細やかな介護を行なっていることが見て取れた。

人間と同じで年齢を重ねると介護が必要になることも多い。photo/Getty Images

犬の寿命は、フィラリア症の予防薬、イベルメクチンの普及によって劇的に伸びた。以前は7〜8歳くらいでフィラリア症により亡くなっていた犬たちが、今では15、6歳まで生きることもざらだ。

そうなってくると、認知機能不全症候群などの、高齢犬ならではの問題が出てくる。最終的には寝たきりになり、自力でご飯を食べることも用を足すこともできず、いわゆる「介護」が必要になることもある。

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今は元気な愛犬も、いつか、しかも確実に人間より速いスピードで年を取り、シニアと呼ばれる時期に差し掛かる。とても悲しいことだが、闘病や介護が必要になった時、「大変だから」「手に負えないから」「お金がないから」などの理由で手放す人が少なからずいると聞く。小さい頃はかわいがって、歳を取ったら飼育放棄をする人がいる背景には、「動物がシニアになったときの知識」が不足していることも原因のひとつだと感じている。

ペットの老化はつらいことばかりではない。老犬ならではのかわいらしさ、優しい時間も共有できる。photo/Getty Images
獣医師で作家の片川優子さん連載「ペットと生きるために大切なこと」。自身も犬と猫を飼っている片川さんに獣医師と飼い主の立場からペットと幸せに暮らすための知識を伝えてもらっている。今回のテーマは、「愛犬がシニアになったとき」。愛犬がシニアになったとき、「若いうちにこうしておけばよかった」と後悔しないために、シニア犬になる前にできる準備や心構えについて寄稿いただいた。
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