知識人「言論男社会」の深すぎる闇…「呉座勇一事件」の背景にあったもの

後藤 和智 プロフィール

さらに、最近は特にフェミニストやヴィーガン、それもネット上で揶揄されているような像に適合するような「なりすまし」もあります。

2020年の年末から2021年の年始にかけて、「映画「鬼滅の刃 無限列車編」に女性専用車両の描写がない」「「ミスタードーナツ」は女性差別的だから「ミスドーナツ」にすべき」「ファミリーマートの「お母さん食堂」の使用をやめるよう求める署名に8回署名した」などというツイートを投稿した「綾野辻子@FemininV」というアカウントが話題になりました。

特に3つ目の発言については、この発言を根拠に当該署名が不正であると主張する人もいました。しかし有志が調べたところ、ヘッダーが海外で製作されたフェミニズムを揶揄する画像だったりするなど、明らかに「釣り」ではないかという指摘が相次いでいます(「【悲報】フェミニストになりすましたバレバレの釣り垢に釣られる人が続出」)。

さらに、「スターバックスの紙ストローは男性器を想起させる」などというツイートをしたアカウントが画像ツイートで晒されて、そのツイートが1万を超えてリツイートされたことがありますが、当初のツイートについても、そもそもできたばかりのアカウントの最初のツイートからわずか14分後のものであり、さらにそれを「晒し上げた」のが最初のツイートがわずか24分後、さらにストローの画像も拾い物の可能性が高いことなど、明らかに不自然な点が多数ありました(うさまる「馬鹿なツイフェミとストローマン論法」)。

フェミニズム/フェミニストについては、こういう「なりすまし」が横行しているという現状もあり、それに対して反フェミニズムのネットユーザーが次々とリプライをしたり晒し上げを行ったりしているという現状があります。

ここまで見た「歪曲」や「茶化し」や「言いがかり」という行為には、社会問題に関する言説を仲間内で消費し、見下す以上の効果はありません。

社会問題や表現の問題に対し、「左派」「リベラル」「フェミニスト」に対する揶揄や嘲笑をいちいち混ぜ込まないと発言できない/発言しないというのは、彼ら自身が自らの発言とその社会的意義を軽く見ているということに他なりません。

 

「活動家嫌悪」という空虚な中心

ここまで、ツイッターを中心にいくつかの反「リベラル」や反フェミニズムに見られるようなコミュニケーションの様式を実例を交えつつ述べてきました。

そして、ここまで見てきたようなコミュニケーションの様式の根幹をなすのは、次のような認識ではないでしょうか。特に上の3つの発言は、2020年秋頃、日本学術会議の任命拒否問題が起っていたときに発せられたものです。

とにかく社会運動している連中の学問というのを僕は信用しません。(中西大輔/ https://twitter.com/daihiko/status/1313839180032565257
なんで、いま、みんな日本学術会議に関心を持っているの?新政権のツッコミどころだからというだけでしょう。もともとほとんど関係ないうえに興味もなかったじゃない。ぼくだってそうで、たぶん1、2回ほど部会のシンポジウムかなにかで話したことあるけれど、はっきり言えば関係ない。(西田亮介/ https://twitter.com/Ryosuke_Nishida/status/1312929611081080832
学術会議や学会リベラル論壇自体とは微妙に距離を置いている大学周辺の人たちの「菅さんのこれ、割とマジに一線超えてる感じするけど、いつもの人たちがいつものノリで乗っかっちゃったのでもう終わりだね。まあ、学術会議自体も問題あったしなあ」みたいな温度感、なんか凄い同情してしまいますね……( https://twitter.com/hershamboyz/status/1313445963059535873
オタクは社会活動なんか心底どうでも良いと思ってますから、オタクからの攻撃がエスカレートしたと思うのならそれはそちらが先に手を出したせいです。(ある大手同人誌即売会で長年スタッフとして参加している人物/ https://twitter.com/Calcijp/status/1197780999859425288

こういった、アカデミアやオタク界隈における「運動家嫌悪」という態度、そしてそういった態度こそが「冷静」「中立的」といった態度です。場合によっては「運動家」たちは自分たちの私的領域に勝手に踏み込んできているだけだという認識も開陳されます(そもそも4個目の発言は、私は一介のコミケ参加者として、勝手に主語を大きくするな、と思います)。

私も、ある同人誌即売会で女性差別に関する研究書(『続・ツイッターにおける女性差別に関する考察』筆者のBOOTH及びBOOK☆WALKER、メロンブックス、とらのあなにて電子書籍が配信中)を頒布していたところ、明らかに私より年上のある男性の一般参加者から「フェミニズムやヴィーガンは自分の心に土足で上がり込んでくるから嫌だ」ということを言われたことがあります(もっとも、同書に対して「よく言ってくれた」という人のほうが多かったのですが)。

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