今や若者の半数以上が「オタク」…この四半世紀で一体どう変わったのか

飯田 一史 プロフィール

——少し脱線しますが、オタクの内面・価値規範・人格に関してではなく外見の研究はありますか?

大倉 オタクのファッションに関する研究は聞いたことがないですね……。ただ僕はコミックマーケットのスタッフを長いことやっていますが、「チェックのシャツをシャツインして、履き古した運動靴をボロボロにしてバンダナ巻いて」みたいなオタクはもうまったく見ません。普通、ないしおしゃれになっている。踊り手のRAB(リアルアキバボーイズ)のようにあえて演出している人の影響でオタクファッションのイメージは世間的にまだ残っているけれども、実際はほぼいない。

荒井 ハロウィンではたまに見ますけどね(笑)。

大倉 僕もドンキホーテのコスプレグッズコーナーで「アキバボーイ」と書かれたものを見たことならありますよ(笑)。

 

——ファッションにその人のライフスタイルや価値観が反映されるのだとしたら、今のオタクにとくに外見的特徴がないのはまさに「人格類型としては成立しない」現状にふさわしい気がしますね。

大倉 先ほど申し上げた1990年の調査で宮台さんらが提出した若者の人格類型をいま再検討しているのですが、当時は趣味・テイストで若者を「オタク」と「新人類」に分けていました。ところが2020年の調査では、趣味やテイストで若者を分けるという軸自体がどうももう機能していない。それに代わり、中央大学の松田美佐さんが同じデータを使って「TwitterとInstagramのどちらで情報を発信しているかで若者が二分される」という仮説を検討しています。

——それは納得感が高い(笑)。荒井さんにうかがいたいのですが、ギャル・ギャル男において「ツヨメ」「チャライ」「オラオラ」が称揚されなくなったあとにも価値規範や文化的な連続性はあるのでしょうか。

荒井 実際にふだんから行動に起こせる人は減っているとはいえ、エッジィな層には継承されていると思います。僕がフィールドワークしている渋谷では、海外に出る、YouTuberになる、投資家になるといったかたちに変化しながら、価値規範は残っています。かつて渋谷のイベサー、ギャルサーの中核にいて突飛なこと、新奇なことをしていた層は家がお金持ちで高学歴の子が多かったのですが、そういう子たちはいまだと海外留学に行くことを選ぶのが一番多い。もちろん本物の不良も一部います。

内面ではなく外見に目を向けると、ファッション類型としてのギャルももちろん続いています。日焼けや、肌の露出という要素は減りましたが、脱色した明るい髪、目を大きく強調したメイク、ネイルの装飾といった要素は、今でも引き継がれています。「色素薄い系」と言われるカラコンを入れて欧米人とのハーフっぽいメイクの子などは、特にギャルの流れを継いでいると思います。男であればホストやオラオラっぽいファッション、いわゆる「ヤリラフィー系」と呼ばれるパリピっぽいキャラの子なども、近いですね。キャバ嬢にもギャルメイク・ファッションは残っている。ただ、キャバ嬢にもオタクっぽい子は増えています。

TikTokやインスタのリールなどを見ても、露骨な肌の露出こそしないものの胸元やセクシーさを強調した服を着て踊る女の子とかは普通にいて、表向き「チャライ」と「オラオラ」は控えめにしているけれども、かたちが変わっただけで本質はかつてと近いのかなと思っています。

(後編「「今の若者は元気がない」「全然酒飲まない」と思う大人たちが理解していないこと」はこちら)

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