今や若者の半数以上が「オタク」…この四半世紀で一体どう変わったのか

飯田 一史 プロフィール

環境変化がもたらした価値観の変化

——ネット・スマホ普及に伴うコンテンツ受容以外に、当事者の価値観の変化はありますか?

荒井 僕が学生だったころのギャル・ギャル男文化は「イケイケなことをしているやつはかっこいい」と思われていました。「ツヨメ」(人目を引くような新奇な行動)、「チャライ」(性的に奔放で異性愛を利用)、「オラオラ」(検挙されない範囲での反社会性を利用)が行動規範でした。ところが2011年頃から読者モデルになった子が未成年なのに飲酒や喫煙をした写真がネットに上がってクビになるといったことがいくつも起こって「炎上しちゃうからそういうのはやめよう」となった。それよりもSNSにポジティブな面を載せてシェアすることが称揚される方向に変化していきました。読モやインフルエンサーが所属する事務所はもともと渋谷のイベサー出身者が作ったものが多いんですが、そんな不良の元締めみたいな人たちが若い子に「お前ら、酒やタバコはやめろ」と言うようになったわけです。

この変化を僕は「Gathering(集まること)からSharing(共有すること)へ」と形容しています。かつて渋谷のギャル・ギャル男は集まって悪さを含むような楽しみを通じて、実は将来に結びつくような能力や、社会関係資本、人脈を手に入れていた。社会的・性的・道徳的逸脱を含む過激な行動は「あいつはすごい」と言われるような「ハクをつける」ものだった。それがSNS普及とコンプラ重視によって、「みんなで集まって楽しい」とか「ジム行って運動してきた」的なポジティブなリアリティをシェアして「いいね!」を集めるほうに、自己承認欲求の発露や将来のための社会資本形成の軸が移っていきました。

コロナ禍によってパーティして写真を撮ってみたいなことが難しくなったこともあってか、この1年ほどで個人で撮った動画の投稿が中心のTikTokが非常に伸びた。気にしない子は気にしないので、遊んでいる子はコロナにかかってしまって、困ったことになってしまってますが。

 

大倉 GatheringからSharingへの動きはオタク文化でも相似形をなしていると思います。僕の論文では現在のオタクには、コンテンツをひとりで消費する、孤独耐性が高いけれども自己肯定感は低いという従来型の「消費優先型オタク」と、流行を友人と共有しつつ恋愛にも活用する、自己肯定感が高いが孤独耐性は低いという新たに目立つようになってきた「共有優先型オタク」の2種類が存在するのではないかと書きました。深くひとりで鑑賞・耽溺することよりも、「応援上映」などを通じて友達といっしょに消費することのほうに、より楽しみを見いだす層が台頭してきているという印象があります。

もっと言うとオタク文化ではネットの普及に伴って価値観の「変化」があったというより「拡散」してしまった。かつてオタクはたんに漫画やアニメが好きというだけではなく、ある種の人格類型でありライフスタイルだとみなされていた。その前提が今では通用しない。だからこそたとえば「オタク趣味のあるギャル」が普通に成立するようになりました。

荒井 たしかに2009年にデビューした椎名ひかりは『egg』『Ranzuki』『Popteen』という3つのギャル雑誌の表紙を飾りましたが、オタク趣味があった。もともと渋谷のギャル・ギャル男文化では「メイクはバチバチでチャラいけど実は医学部」みたいなギャップが好まれてはいたものの、椎名ひかりあたりからギャルがアニメ、コスプレ好きでもアリという価値観に変わっていきました。

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