自分に期待しすぎず出し切る

玉井選手はインタビュー中、「どんなスポーツでもある程度できる」と言っていた。小学1年生のころから、人の動きをよく観察し、頭や身体を使ってイメージし、自分の身にすることができるというのも才能のひとつなのだろう。こう書きながら、私自身引退し、競技から一歩離れてみると、改めて飛込というのは繊細な競技だと感じる。
オリンピックが近づくにつれ、周囲からの注目度は高まり、常に結果を期待される重圧を背負う14歳。果たして彼はその重圧をどう感じているのか。

「大体、悔し涙は自分が期待していた以上にできなかったとき、嬉し涙は期待以上にできたときなので、今は自分に期待しすぎず、『今できることを出し切る』ということを意識するようにしています。試合前に、今日はこれくらい点数とりたいなという目標を設定していて、その目標を達成できないと悔しいです。周囲からの期待はあまり考えないようにしています。昔はそれで自分を追い詰めて失敗したけど、今は競技をやれていればいいかな、続けてればいいかなと思っています。でもやることはやる。そうすればいつか終わる。コロナになる前、オリンピックに向けた合宿が多くなって、いつか終わりがくるならやれるところまでトコトンやろうと思うようになりました」

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しかし、コロナでオリンピックは1年延期。オリンピックが2020年に開催されていれば、玉井選手は全ての競技を通じて日本男子史上最年少の13歳10ヵ月での出場が期待されていた。さらにプールが閉館し練習も思うようにできない日が続いたが、2020年9月に行われた日本選手権で高飛込と3m飛板飛込で2冠を達成したのだ。
苦しい状況の中でも、玉井選手の進化は止まらない。

ではどのようにしたらこのような選手が育つのだろうか。その背景には、玉井選手が育った環境にもあるのではないだろうか。後編で、今の玉井選手を支えてきた「大人たち」についてお伝えしていく。

心身ともに強くなっている14歳。いったいどのように育ったのだろう 写真提供/JSS宝塚