飛込競技は日本では競技人口が少なく、競技のルールを知らない人が多い。「ただ高いところから飛び込む」という認識で止まっている人がほとんどだろう。しかし中国では卓球と同様の国技であり、オリンピックでも必ず表彰台に中国人選手がいる。私もかつて飛込選手だった頃は、幾度となく中国国歌を聞いてきた。アメリカやオーストラリア、カナダも強豪国であり、飛込界のレベルが年々上がっている。

そんな中で日本は、オリンピックでまだメダルを獲得したことがない。男子は6演技、女子は5演技行い、その合計得点で順位が決まる。得点は各審判が10点満点で評価し、そこに技の難易度をかけたものが得点となる。つまり6本や5本の演技のうち1本でもミスをすれば順位も大きく変わるのだ。

空中での技の美しさ、水中に吸い込まれるような水しぶきを立てない入水が競技の見所だ。選手たちは恐怖と戦いながら高難度の技を習得する精神力と集中力、高い身体能力、まさに心技体が試される競技なのだ。
静寂に包まれる会場内で、観客や審判の視線が自分だけに集中する。聞こえるのはプールの水の音だけ。この極限の緊張感の中で選手は、戦っている

写真提供/JSS宝塚
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小学1年でも真剣に練習していた姿

私は、玉井選手が飛込を始めた頃のことが、今でも強く印象に残っている。飛込みの体験教室に一緒に参加していた子供たちは、1本飛ぶたびにプールサイドで遊んだり喋ったり。そんな中、一人だけ真剣な表情でコーチに指導された内容をイメージトレーニングしている、それが玉井選手だった。まだ小学1年生にして、周囲の子供たちとは違うオーラと強い眼力を感じたのをよく覚えている。同じクラブで練習し、もちろん話をしたこともあったが、改めて、今回ワールドカップを目前に控えた玉井選手にしっかりインタビューさせてもらった。

「お兄ちゃんが水泳をやっていて僕も泳げるようになるために通っていました。小学1年生のときにその隣で飛込の体験教室をやっていて、やってみたいなと思ったのがきっかけです。とにかく楽しかった。体験教室が終わってお母さんと帰り際に『まだ続けてみたい?』と聞かれて『うん』と言っちゃって、それで育成クラスに入りました」(玉井選手)

「言っちゃって」という表現に、私は彼なりの苦しみがあることを感じた。それは意外だった。なぜなら同じ飛込選手として、あれだけ才能があり、飛べば飛ぶほどうまくなり、一生懸命練習しているのを見て、きっとやっていて気持ちいいだろうなとある意味、嫉妬していたからだ。

しかし玉井選手にもやめたいと思ったことがあった。