飛込の元日本代表で、競泳の瀬戸大也選手の妻でもある馬淵優佳さんが、アスリートたちにインタビューをしていく「スポーツが教えてくれたこと」。今回お話を伺うのは、優佳さんがともに練習をしたこともあるという飛込の玉井陸斗選手だ。2021年5月1日から6日にかけて開催される飛込のワールドカップ。以前は13歳で年齢制限にひっかかり、出場できなかった玉井選手がその実力を披露する場になる。そしてそれが東京五輪代表を決める大会にもなる。

玉井選手は優佳さんの父でもある馬淵崇英コーチのもと、五輪代表選考の意味を持つ5月の飛込ワールドカップに出場予定。2019年4月、12歳でシニア大会にて優勝し、その若さで飛込のエースとなった玉井選手の素顔に迫った。その前編では、優佳さんだからこその飛込競技の裏側と、瞬間で美しい飛込をする玉井選手の魅力の理由をお伝えする。

優佳さんも一緒に練習していたJSS宝塚にてインタビューは行われた(撮影のときだけマスクを外して近距離になっています) 撮影/馬淵崇英
-AD-

たった2秒ですべてが決まる競技

水に濡れた肌に当たる冷たい風。遮るものがなく、不安な気持ちを暖めてくれる太陽。360度見渡す限り自分より高い建物はない。飛込台の先端に立つと、あんなに大きいプールが10mからでは小さく見える。コーチの声がはるか下から聞こえる。指先から足先まで研ぎ澄まされた集中力で己の恐怖心をかき消す。

2秒。この踏み切ってから入水までのたった2秒ですべてが決まる競技、それが飛込だ。その飛込競技で、今最も注目されている選手がいる。

玉井陸斗選手をご存知だろうか。彼は2019年4月に行われた日本室内選手権で、弱冠12歳にして史上最年少優勝を飾った。2位と約60点という大差をつけての優勝だった。当時の身長は145センチしかなかった。表彰台の一番高いところに上がっても両端の選手と肩を並べるくらいだ。沢山の選手やコーチが彼の元に駆け寄り、抱きしめ、頭を撫でる。まだあどけなさが残る少年の目には嬉し涙が溢れていた。彗星の如く現れた少年は何者だ?と、飛込界や多くのメディアをざわつかせた。

あれから2年、年齢制限によって出場できなかった2019年7月の世界選手権を乗り越え、彼は夢のオリンピックへのラストチャンスを掴むため、今日も10メートルの飛込み台の先端に立つ。

写真提供/JSS宝塚