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コロナウイルスによる100万人の死者には約6兆ドルの価値があった

疫病と人類知(7)
医師であり公衆衛生学の研究者であり、社会的つながりを解き明かしたネットワーク科学の先駆者である知の巨人、イェール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長ニコラス・クリスタキスによる疫病と”人類知”の攻防を描いた『疫病と人類知 新型コロナウイルスが私たちにもたらした深遠かつ永続的な影響』。
今、もっとも求められた世界的権威による最高の知見から、抜粋してお届けします。人類は数々の疫病と戦って歴史を紡いできた。わたしたちは「希望」を必ず見いだせる!>これまでの連載はこちら

コロナウイルスが人類の平均寿命を短くした

SARS-2(※1)を、過去1世紀の間にアメリカで発生した主要な致命的感染症と比較したらどうなるだろうか? この新しい病原体が人類にもたらされただけで、わたしたちの平均寿命が短くなったことは明らかである。

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たとえば原発事故による広域汚染や、世界的な気温変化のように、外的な力が人間を取り巻く環境を悪化させ、わたしたちが生き延びることを難しくしている。その全体的な影響の定量化は一筋縄ではいかない。ただ、単純に死亡者数を数えることからなら着手できる。これは何度も繰り返し訴えるべきことだが、SARS-2の本質的な疫学的パラメーターを考えた場合、何も対策を講じなかったならば、第1波に見舞われたとき、アメリカでは100万人、世界中では数え切れないほどの人が、このウイルスによってあっさり命を落としていた可能性がある――また、収束を迎えるまでは、そうなることもありうる。

個人の観点からすると、死のリスクをどのような指標を使って評価すべきかについては、たとえば絶対的に見るべきか、その他の原因と関連して見るべきかなどは、難しいと言える。この病気にかかっても、70歳や80歳以上の高齢者でない限り、死亡する割合(CFR)は1%程度だと説明したが、はっきり言って、これは医師からするとかなり悪い数字だ!

もう少し話に輪郭を与えるために、新型コロナウイルスで入院した場合に死亡する確率を検討してみよう。全体的に、リスクは10から20%ほどだ(繰り返すが、これは年齢や病気の重症度に大きな影響を受ける)。大まかに言えば、40歳の入院患者の死亡リスクは約2から4%だ。これは、アメリカで心臓発作により入院した70歳の患者の死亡リスクの範囲と同じである。実を言えば、どの年齢でも、生きて退院できる可能性という点では、新型コロナウイルスで入院した場合は心臓発作で入院した場合よりも有意に悪くなる

だが、これは実際に感染するか入院するようになった人のリスクにすぎない。基準値ではどうなのだろうか? アメリカの人口3億3000万人のうち、毎年約300万人が死亡しているので、粗死亡率は1000人当たり9.1人となる。

仮定の話として、新型コロナウイルスのパンデミックにより1年間で100万人の死者が出たとすると、粗死亡率は1000人当たり12.1人に上昇する。平均的な人がこのウイルスにより死亡する絶対リスクは依然として小さく、1000人におよそ3人の確率である(新型コロナウイルスによる死亡者数100万人を人口3億3000万人で割った値)。これは低い数値に思われるが、このレベルの死亡率は、平均的な人がその年に直面した生命へのあらゆる脅威をはるかに上回ることになり、新型コロナウイルスが死因の第1位となる

※1
SARS-1 2003年に出現し、小規模なパンデミックを引き起こしたコロナウイルス科のウイルス。SARS-CoV-1とも呼ばれる。
SARS-2 2019年に出現し、大流行を引き起こしたコロナウイルス科のウイルス。SARS-CoV-2とも呼ばれる。

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