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科学者<政治家‥!? 科学者は政治家の「便利なご意見番」なのか?

疫病と人類知(6)
医師であり公衆衛生学の研究者であり、社会的つながりを解き明かしたネットワーク科学の先駆者である知の巨人、イェール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長ニコラス・クリスタキスによる疫病と”人類知”の攻防を描いた『疫病と人類知 新型コロナウイルスが私たちにもたらした深遠かつ永続的な影響』。
今、もっとも求められた世界的権威による最高の知見から、抜粋してお届けします。人類は数々の疫病と戦って歴史を紡いできた。わたしたちは「希望」を必ず見いだせる!>これまでの連載はこちら

サウンドバイト(※1)時代の科学の役割

近年の社会を悩ませてきたとわたしが考える、ある種の政治的・文化的傾向を、パンデミックはもしかすると逆転させるかもしれない。パンデミックの初期に、過去20年間にわたる知的生活の衰退が、ウイルス蔓延に対処する際の障壁になるのではないかと不安を抱いた。

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政治の硬直化や地理的に分離された生活パターンにより、世間の人々は対立する考えを受け入れなくなっており、気候変動から大量投獄に至るまで、さまざまな社会問題への対応に支障をきたしている。その他多くの扱いづらい収束的な特徴とともに、この知的衰退がパンデミックへの対応を困難にするのではないかと危惧した。

何よりも、科学の軽視がますます進んでいる。科学は政治的な目的に資するためにあると見なす人が増えた。事実の客観的評価が可能だという基本的な考えさえも、多くの人々は放棄していた。

一般の人々の科学的リテラシーも低い。アメリカ人の38%が、過去1万年の間に神が現在の姿の人間を創造したと信じている。アメリカ人の25%以上が、太陽が地球の周りを回っていると信じている。61%の人は、宇宙がビッグバンから始まったことを正しく認識できない。ワクチンの有効性を否定する人がかなりの割合を占め、また、政府が国民をコントロールするために飛行機の排出ガスを利用しているといった、荒唐無稽な陰謀論を信じている人もいる。

科学の重要性の否定とは別に、政治的信条の両極にいる過激主義者により、専門知識の軽視と反エリート主義の推進がわたしたちの社会で行われている。専門家は世事に疎いエリートとみなされ、専門知識は、大衆を犠牲にして特権階級のためにリソースを得ようとする一種の陰謀だとみなされている。

だが、多くの人がさまざまな職に就き専門技能を磨くことに人生を捧げている。社会学者のエバレット・C・ヒューズが、1人の人間の緊急事態は別の人間の普段の仕事であると指摘したことは、よく知られている。自宅の配管に大量の水漏れが発生したとき、あなたにとっては非日常的な出来事で緊急事態である。しかし、修理に来た配管工にとっては日常的な出来事だ。

人間が都市に居住するようになり、専門性を築き、物だけでなく知識も交換する方法を開発するようになった頃から、社会はこのように組織化されてきた。整備士や外科医を探すときには、その専門知識や能力を求めているのだ。

※1 サウンドバイト
ニュースのために短く切りとられたり、一部が引用される専門家や政治家の発言]
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