月のクレーターを電波望遠鏡にする驚きの宇宙観測計画とは?

世界がふたたび月を目指す理由

月のクレーターを利用した巨大望遠鏡

アポロ11号が月に着陸してから50年あまり。世界の目がふたたび月に向かっている。
中国は2019年に「嫦娥(じょうが)4号」で、月の裏側への着陸に世界で初めて成功した。さらに昨年末には「嫦娥5号」で月の土壌を地球に持ち帰った。月サンプルの回収は、1976年のソ連の「ルナ24号」以来44年ぶりだ。

そのルナ24号から45年の時を経て、ロシアの探査機「ルナ25号」も今年10月に月に向かう予定だ※1。 

いっぽうでNASAは、2024年に宇宙飛行士を月面に送ることを目指すアルテミス計画を進めている※2。4月16日には、イーロン・マスク氏率いる民間宇宙企業SpaceX社と、「アメリカ人をふたたび月に立たせる」月着陸船の開発契約を結んだと発表した※3。 
 

SpaceXの月着陸船の想像図 Photo by SpaceX

月は新たなフロンティアとして、そして火星に進出するためのステップとして期待されている。いっぽう、地球上では不可能な宇宙観測を実現する場として、月に注目している人々もいる。

NASAのジェット推進研究所のバンディオパダヤイ氏は、月の裏側のクレーターに電波望遠鏡を建設することを提案している※4。 直径3キロから5キロのクレーターにワイヤーメッシュを張ってパラボラアンテナにし、外周部から張ったケーブルからクレーター中央に電波受信機をつりさげる。
 

月クレーター電波望遠鏡の想像図 Credits: Vladimir Vustyansky

そうしたワイヤーメッシュやケーブルを設置する作業には、クレーターの壁を登ることのできるロボットを使うという。

この「月クレーター電波望遠鏡(LCRT)」は、2020年4月にNASAのNIAC(NASA革新的先端概念)プログラムに選ばれ 、今年4月には同プログラムの第2フェーズに進んだ※5。まだ概念研究の段階であり、NASAの正式ミッションではないが、NIACの助成を受けてさらに詳しい設計を検討する予定だ。

「実現すれば“太陽系で最大”の電波望遠鏡になる!」とバンディオパダヤイ氏はいう。

このLCRTで観測するのは、ビッグバン直後の生まれたばかりの宇宙から発せられた電波だ。そうした電波は、地上にとびかうさまざまな電波にかき消され、地球上の電波望遠鏡では観測できない。また、地球をおおう厚い大気や電離層も観測のじゃまになる。

いっぽう月はいつも同じ面を地球に向けており、月の裏側には地球からのノイズ電波が届かない。月自体がシールドになるのだ。もちろん、月には観測のじゃまになる大気もない。

月の裏側に電波望遠鏡を設置する計画は、ほかにも提案されている。系外惑星の磁場が発する弱い電波を観測するというアイデアもある※6。磁場があれば、宇宙線などをシールドするので、惑星に生命が存在する可能性も高くなる。

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