「さくら味」っていったい何の味? 実は意外なものにも添加されています

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「さくら味」の正体は?

次は「さくら味」についてですが、そもそも「さくら味」とは一体何を指しているのでしょうか? おそらく皆さんが想像している風味とは、桜餅や桜の葉の塩漬けの独特な甘くかぐわしい香りなのではないでしょうか。この香りの元となっているのは「クマリン」という化学物質です。

Photo by aaboikis/iStock

しかし、普段私達の周りで咲いている桜からはその独特な香りはほぼ感じられないと思います。なぜかというと、クマリンは桜の葉の細胞内の液胞という部分にクマリン酸と糖が結合した状態(クマリン酸配糖体)で存在しているからです。

桜の葉を塩漬けにしたり破砕したりすることで、液胞が壊れてクマリン酸配糖体が液胞の外に含まれる酵素βグルコシダーゼによりクマリン酸とグルコースに分解され、その後クマリン酸が分子内脱水縮合しクマリンが生成するのです。

余談ですが、桜の葉に含まれるクマリン配糖体は春より秋のほうが多いといった研究結果もあります。春の風物詩であるさくら風味の旬は、実は秋なのかもしれませんね。

ちなみに、私達が普段食べる桜餅に使われている桜の葉は先述したソメイヨシノのものではなく、そのかけあわせ元の親の一つであるオオシマザクラの若葉のようです。

クマリンは人工的に合成することもできます。ところでこのクマリン、実は意外なところでも活躍しています。それは不正軽油の検出です。

そもそも不正軽油とは、主に軽油引取税の脱税のため、承認を受けずに軽油にそれ以外の油を混ぜたものや軽油以外の燃料油を軽油と偽って販売・消費されているものなのですが、クマリンを一定の濃度で灯油やA重油(軽油以外の油種)に混ぜておくことで、軽油以外の油が混ぜられていないか検出をすることができるのです。

というのも、クマリンはブラックライトを照射すると黄緑色の蛍光を発するという性質をもつからです。

少し話が逸れてしまいました。そもそもソメイヨシノの花からはあまり「クマリン」の香りがしないことに加え、マスク越しでは香りというものを感じにくくなったこのご時世ではありますが、桜を目にしたときにでもこのコラムのことを思い出していただければ幸いです。

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