「ポスト・メルケル」は誰に…独与野党が9月総選挙に向け首相候補擁立

風は緑の党に吹いているが

緑の党が闘志をむき出しに

4月19日午前11時に、緑の党は独自の首相候補を発表すると予告していた。今年の9月26日、ドイツでは総選挙が行われ、16年間続いたCDU(キリスト教民主同盟)のメルケル政権に終止符が打たれる予定だ。

緑の党は1980年の創立以来、40年かけて一定の影響力を培ってはきたものの、まだ主要政党には数えられておらず、これまでの総選挙で首相候補を擁立したことはなかった。ところが、今回は、その緑の党に少なからず首相府奪取のチャンスが巡ってきており、当然、千載一遇とばかりに闘志をむき出しにしている。

〔PHOTO〕gettyimages

緑の党には党首ではなく、男女一人ずつからなる代表がいる。そのうち、首相候補はロバート・ハーベック氏(51歳・男性)か、あるいはアナレーナ・ベアボック氏(40歳・女性)かと、かなり前から、皆の興味はそこに集まっていた。

ハーベック氏は、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の州政府で、2期にわたり、SPD(社民党)、及びCDUの州首相の下、州副首相や農業・環境大臣などを務めた経験がある。

一方のベアボック氏は恐ろしく口が立ち、特に戦闘的なスピーチがうまいが、まだ州でも郡でも、一度も行政に関わったことがない。そのため、もし、万が一、彼女がドイツの首相になったなら、ポンポン船も操ったことがない者が航空母艦を操縦するに等しいとして、まずあり得ないだろうと見られていた。

 

ところが、CDU/CSUとSPDが首相候補として出してくるのが、どちらも年配の男性だとわかって以来、突然、若い女性であるベアボック氏にスポットライトが当たり始めた。こうなると、もちろん、戦略上、ハーベック氏よりも彼女に分があるからだ。しかも、その未経験のベアボック氏自身が、かなり強硬に、自分こそが首相候補だと主張しているらしいという噂も漏れ伝わってきていた。

さて、予告通り、その日、揃って記者団の前に現れた二人だったが、ハーベック氏が短いスピーチで党の結束を謳い、隣にいるベアボック氏をさりげなく首相候補として紹介した。

どのように彼女を選出したのか、党内で揉めたのか、揉めなかったのか、ハーベック氏との関係は?など、舞台裏は一切垣間見えず、とてもスムーズ、かつスマートな演出だった。

それを受け、ベアボック氏が高揚したスピーチをし、「私はまだ、首相になったことも大臣になったこともありません。その席は目下のところ他の人が占めていますが、私は刷新のためにやってきました!」と高らかに宣言し、「未経験」という短所を、あっという間に長所に変えてしまったのは見事だった。

〔PHOTO〕gettyimages

その日、報道はあっという間にベアボック一色になり、ドイツの主要メディアは緑の党のシンパが多いこともあり、どれを見ても、好意的なコメントと爽やかな写真が満艦飾だった。

AfD(ドイツのための選択肢)のある議員だけが例外で、「ジョージ・ソロス、おめでとう!」として、ベアボック氏がソロスの愛弟子、かつ操り人形であると示唆するツイートを出していた。AfDらしいと言えば、AfDらしい。

 

一方、ちょうどこの頃、CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟)では、統一首相候補の選出をめぐり、どす黒い権力闘争が続いていた。それもあり、国民の目には、緑の党の首相候補選出の光景が、これ以上はないというほどのコントラストとして映ったのだった。

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