三体問題が解けないことを証明したのは誰?…ポアンカレはいったい何を証明したのか

三体から生まれた「カオス」の発見
浅田 秀樹

人類 vs. AI

ポアンカレの発見によって、科学者は「三体問題」に対する一般解を見つけ出すという長年の夢から覚めてしまいました。かわりに多様な現象を生み出すカオスの研究が勃興していきます。 しかし、ポアンカレの定理は「三体問題の解が構成不可能」だということを主張してはいません

あくまで一様収束する、つまり任意に長い時間にわたって正確な無限級数の解が存在しない、ということが彼の定理からの結論です。「三体問題」における任意の時刻での天体の位置を、何らかのある関数を用いて表示することが不可能だとは主張していません。

最近、AIという言葉をあちこちで聞くようになりました。AIが人間の知能を追い越してしまい、人類の知的営みや仕事の多くが取ってかわられるかのような悲観的雰囲気さえ漂っています。

たしかに、果てしない級数を足し上げる、10の何乗もの組み合わせを即座に調べる、などの芸当ではコンピュータに人間はかないません。

しかし、人間には「閃く」という能力があります。ポアンカレは直感を信じる数学者でした。

ポアンカレは、著書『科学と方法』の中で「証明するのは論理によってであるが、発明するのは直観によってである」(岩波書店。引用時、原文を新字体に直しました)と述べています。ポアンカレ以降も、科学者たちは閃くことで「三体問題」に対する新しい特殊解を見つけていきます。

20世紀半ば以降、電子計算機の登場によって発見された「三体問題」の解とは?
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