命の輝きを象徴する「緑」

梅の木は大陸から渡来した園芸品種で、初春のまだ緑も花も少ない時期に、香りの良い花を咲かせてくれます。万葉集には、梅の花を愛でる歌がたくさんあります。

現在の元号「令和」は、「万葉集」の梅の花の歌32首の序文から引用され、決められたのは、記憶に新しいところです。

『時に、初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぐ。梅は鏡前の粉(ふん)を披(ひら)き、蘭は珮後(ばいご)の香(かう)を薫(かを)らす。』

意味は以下のとおり。

時折しも、初春は正月の佳(よ)い月にあたり、気候は良くて風は穏やかだった。梅の花は鏡の前の白粉のごとくに白く咲き誇って、香草は匂い袋のように香り立っていた。

当時の梅は白梅が多く、白の美しさや芳しい香りが詠われました。

2002年撮影 photo by gettyimages
-AD-

梅は花が終わると、初夏には丸く大きな実をつけます。青梅はまだ熟していないので硬く、種を守るため「青酸配糖体」という、糖と青酸が結合した物質が含まれています。100個くらい食べると、 頭痛、めまい、発汗、けいれん、呼吸困難などの中毒を起こすことがあります。そのため、青梅は生食せずに、梅酒や梅干しづくりに用いられてきました。漬けたり干したりすることで、青酸配糖体が分解され、よりおいしく、安心して食べられるようになるわけです。

2008年撮影 photo by gettyimages

青梅が黄色やオレンジ色に色づき、香りも甘くなってくると、種も堅くなり、種を守るための青酸配糖体は分解されます。熟した梅の実は、梅ジャムの材料となります。収穫せずに木に残しておけば、動物たちの食糧となり、やがて自然に還ります。

「梅の実あをし」は、青梅の生命力、四季のうつろい、我々日本人が紡いできた生活の知恵や文化を思い起こさせます。直接的な表現ではないけれど、いつの日か感染症を克服する日がやってくるだろうと、希望を抱かせてくれるのではないでしょうか。