雅子さまの歌に詠まれた春の彩り

3月26日、皇室の恒例行事「歌会始の儀」が、皇居・宮殿「松の間」で開かれました。歌会始は、毎年1月中旬に行われる宮中の新年の儀式のひとつ。今年はコロナ禍のため2カ月余り延期され、宮殿内にアクリル板を設置するなど、入念に感染防止対策を講じて開催されました。出席者は全員マスクを着用し、歌を詠み上げる講師や講頌はフェースシールドを付けて、遠方に住む入選者はオンラインでの参加となりました。

令和3年の「歌会始の儀」 写真提供/宮内庁

令和3年の歌会始のお題は、「実(じつ)」。 1万3600首あまりの応募の中から、10首などが天皇皇后両陛下の前で実際に詠みあげられました。皇后陛下雅子さまは、新型コロナウイルス感染症の収束を願うお気持ち、変わらない自然の力を詠まれ、国民にお心を寄せられました。

『感染の収まりゆくをひた願ひ出で立つ園に梅の実あをし』

感染拡大で私たちの日常は変化を余儀なくされていますが、自然のうつろいは変わらず、これまでと同じように青々と大きな実を育んでいる梅の木に対する感慨を歌にしたためられました。「梅の実あをし」と、自然の彩りが詠まれているように、雅子さまの歌は色彩表現がとても豊かで、目の前に情景が立ち上がってくるように感じられるものが、たくさんあります。

今回は、雅子さまが歌にしたためた春の彩りとそのイメージを振り返ってみましょう。

2002年撮影 photo by gettyimages
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「梅の実あをし」の“あをし”は、「青々とした緑」のような平安以前から継承されている表現で、みずみずしい草木の緑のことをさします。現在でも、信号機や若葉や野菜などを指して「青」と呼ぶ事があるように、日本語において、「青」と「緑」は混用されることがあります。平安以前の和歌では、「あを」は青いものにも緑のものにも用いられ、「みどり」も同様に青いものにも緑のものにも用いられています。青と緑が区別して使われるようになったのは、平安以降であると考えられています。

青と緑が混合したカテゴリーのことを、専門的には「グルー(“grue”)」と呼び、世界中のあらゆる言語が発達の途上で、青と緑がそれぞれ異なるカテゴリーに分離していくと考えられています。