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何十万人もの人がマスクで死を免れる! 知の巨人が説くマスクの重要性

疫病と人類知(3)
医師であり公衆衛生学の研究者であり、社会的つながりを解き明かしたネットワーク科学の先駆者である知の巨人、イェール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長ニコラス・クリスタキスによる疫病と”人類知”の攻防を描いた『疫病と人類知 新型コロナウイルスが私たちにもたらした深遠かつ永続的な影響』。
今、もっとも求められた世界的権威による最高の知見から、抜粋してお届けします。人類は数々の疫病と戦って歴史を紡いできた。わたしたちは「希望」を必ず見いだせる!>これまでの連載はこちら

マスクは「公共の利益」

病原体が1つの集団に完全に行き渡ったとき、多くの封じ込め策はもはや必要なくなり、エピデミック(※1)は収束する。それまでは、エピデミックを消滅させるためにRe(※2)を1未満にしなくてはならない(つまり、現存する各症例がもはや自己複製できないということだ)。だが、収束までは封じ込めと損害の軽減が目標となる。この目標を達成するために、わたしたちが使えるさまざまなNPI(※3)を検討してみよう。

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まずは、衛生対策からだ。手洗いのような個人の行為と衛生管理のような集団的対策の両方が、感染症と闘うためには非常に重要になる。1940年以降に生まれたアメリカ人は、清潔な食べ物と水を(たいていは)手に入れられるので、衛生の重要性をほとんど認識しておらず、感染症がもたらした大混乱は記憶にない。

1900年の平均寿命は、主に5歳の誕生日を迎える前に亡くなる子どもが多かったことから低かった。当時、心臓病や癌による死因は、肺炎やジフテリア、下痢などの感染症ほど多くなかった。

マスクはエピデミックの初期には論争の的となり混乱を招いたが、1918年のパンデミックの時期に撮られた街角の写真からもわかるように、呼吸器疾患と闘うために長年使われてきた。当時の人々も、この単純な介入が有効であることを理解しており、マスクの有効性に関する詳細な科学的研究も100年前に発表されている。2020年5月までに、アメリカではマスクが普及した地域もあるが、悪質な反発に直面した地域もあった。多くの企業ではオフィスビル等に立ち入る際にマスクの着用が求められ、地方自治体や州はマスク着用を義務づける条例を可決したが、またしても市民の激しい抗議や抵抗に遭った(条例の撤回につながることもあった)。

※1 エピデミック
特定の社会、共同体における予測を超えた感染症の流行
※2 R0
R0とは、“その病気にかかったことがなく、抗原に曝露されておらずきわめて感染しやすい集団における”一次感染者が引き起こす二次感染者の予想平均数である。R0は、病原体がアウトブレイクを発生させる能力を表し、病原体を制御する手段がない場合の感染性の度合いを示している。一方でReは、集団がすでに“抗原に曝露されている”場合に、流行の後期における感染のリアルタイムの広がりを示す。このReは人間の反応に影響を受けやすい。
※3 NPI 感染症の流行に対抗するために、薬の代わりに、または薬に加えて用いられる、隔離などの非医薬品介入のこと。
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