ついに元警官“有罪”…ジョージ・フロイドさん死亡事件と評決の「歴史的意義」

渡辺 由佳里 プロフィール

黒人に対する「構造的・体系的差別」

BLMを理解するためには奴隷時代に誕生して確立したアメリカでの人種差別の歴史を知る必要がある。

イザベル・ウィルカーソンは歴史書『Caste: The Origins of Our Discontents』(カースト:アメリカの不満の源)でアメリカ独自のカースト制度を説明している。奴隷を使うことで富を増やした南部のプランテーションの持ち主たちは敬虔なキリスト教徒でもあった。しかも、アメリカ憲法では市民は平等ということになっていた。この矛盾を正当化するために、彼らはキリスト教の教えにからめて「黒人は人間ではない」と決めた。

アメリカのカースト制度の上層に属する奴隷所有者の白人は、自らを説得することで、黒人を酷使し、虐待し、残虐に殺しても、「良きキリスト教徒」の「ファミリーマン」として罪悪感を覚えずにすんだのだ。また、カースト制度で下部に属している貧しい白人は、「自分は生まれつき白人というだけで黒人よりは優れた存在だ」と安心し、自分にプライドを持つことができた。

 

このように、アメリカでの黒人への差別は、ただの偏見による差別ではない。政策や社会の慣習といったものを使ってカーストの下層の者をそこから出させないようにする「構造的差別」であり、「体系的差別」なのだ。そして、それが現在までいろいろな法や社会制度によって続いている。その顕著な例が、繰り返し起こる警官による黒人の殺害事件なのだ。

詳しくは「黒人以外の命は大切ではない?略奪を肯定している?BLM批判者の4つの反論に答える」などの記事を読んでいただきたいが、BLM運動がスタートしたきっかけは、2012年にフロリダ州で「自警団員」を自称するヒスパニック系白人のジョージ・ジマーマンが黒人(アフリカ系アメリカ人)の高校生トレイヴォン・マーティン(当時17歳)を射殺した事件だ。

ジマーマンは、少年が「怪しく見える」というだけで追跡し、武器を持っていない相手を射殺した。それなのに、2013年の判決でジマーマンは無罪になり、それに対する抗議の声が全米に広まった。SNSでは「#BlackLivesMatter」というハッシュタグで賛同者を集め、路上でも抗議デモが起こった。

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