「人気者」へのワクチン接種が有効!? スーパー・スプレッダーの実態

疫病と人類知(2)
ニコラス・クリスタキス プロフィール

人気者にワクチンを打つことが有効?

人々の交友関係や人脈の多寡に自然なばらつきがあることには、さらなる意味合いがある。つまり、集団免疫と呼ばれる重要な閾値に達するまでに、実際にはそれほど多くの人がウイルスにさらされる必要がないかもしれないのだ。集団免疫とは、集団全員が個別に免疫をもたなくても、感染症に対して集団的に免疫をもてるという考え方だ。この用語は獣医学に由来するが、人間にも同じように適用される。

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その概念は、ある病気に対して集団の多数の人々が免疫を獲得していれば(病気にかかって生き延びたか、ワクチン接種によって)、集団のなかの個人が何らかの形でその病気に感染しても、他人に感染させる可能性は低いというものだ。したがって、どういうわけか感染の連鎖が始まったとしても、やがて消滅することになる。

だが、ここで再び社会的ネットワークの構造が登場する。社会的つながりの多寡は人によって差があるので、多くのつながりをもつ人気者(Cのような人)は、同じ集団から無作為に選ばれた人よりも、エピデミックの初期に感染しやすくなる。社会的交流が多いため、人気のある人は病気にさらされるリスクが高くなるのだ。たとえば、わたしの研究室で2009年のパンデミック・インフルエンザ(H1N1)のアウトブレイクを分析したところ、友人が1人増えるごとに、エピデミック時に8日早くインフルエンザに感染する傾向があることが判明した。つまり、図のBはAよりも友人が2人多いので、Aよりも16日ほど早く感染するということになる。

だが、これは一方で、人気のある人はエピデミックの初期段階で免疫ができる可能性が高いことも意味する。そして、人気のある人たちがみな早期に免疫を獲得した場合、ウイルスが社会に広まる比較的多くの経路が遮断されることになる。人気のない人たちは、もともとあまり他人を感染させないので、疫病対策の観点からはさほど気にしなくてもかまわない。よって、彼らの免疫はさして問題にならない。さらに言うなら、多くのつながりをもつ人にワクチンを接種するほうが、少ないつながりの人にワクチンを接種するよりも有効だということになる。

 

人気のない人たちはウイルスにも人気がない

スーパー・スプレッド現象を起こすその他の要因としては、屋内に大勢の人が集まる状態が挙げられる。2020年2月29日にジョージア州で行われた葬儀で、誰かが参列者200人の間にウイルスを広め、これが同州で広範にわたりエピデミックを勢いづかせるきっかけとなった。2月にボストンで開かれたバイオテクノロジー企業の幹部会議でも、同様の事態が生じた。このときは数十人が感染した。

さらに、刑務所、高齢者施設、病院、工場、ほかにも人が密集する屋内で、大勢が感染するアウトブレイクが発生した。パンデミック初期の中国で3人以上の患者が発生した318件のアウトブレイクを調査した結果、1件を除いてすべてが屋内で発生したことがわかった。

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