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「人気者」へのワクチン接種が有効!? スーパー・スプレッダーの実態

疫病と人類知(2)
医師であり公衆衛生学の研究者であり、社会的つながりを解き明かしたネットワーク科学の先駆者である知の巨人、イェール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長ニコラス・クリスタキスによる疫病と”人類知”の攻防を描いた『疫病と人類知 新型コロナウイルスが私たちにもたらした深遠かつ永続的な影響』。
今、もっとも求められた世界的権威による最高の知見から、抜粋してお届けします。人類は数々の疫病と戦って歴史を紡いできた。わたしたちは「希望」を必ず見いだせる!>これまでの連載はこちら

「つながり」の多い人がスーパー・スプレッダーになる?

個人のR0(※1 ページ下部参照)に大きなばらつきがあるエピデミック(特定の社会、共同体における予測を超えた感染症の流行)は、多くのスーパー・スプレッダーとスーパー・スプレッド現象(1人の患者が大人数に感染させる現象)とともに現れる。これがSARS-1(※2 ページ下部参照)で起こったことだ。

SARS-1では、1つの感染連鎖が始まるためには4人の感染者の流入が必要だったと推定される(ほかの3人の感染者の流入はエピデミックを発生させずに終わる)。だが、いざアウトブレイクが発生した場合には、爆発的に流行する可能性が高かった。SARS-2(※2 ページ下部参照)に関しては、R0のばらつきはSARS-1よりもいくらか小さいようで、スーパー・スプレッド現象は確かに発生するものの、よくある単調な感染連鎖に比べてあまり見られない。

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スーパー・スプレッド現象およびR0であれRe(※1ページ下部参照)であれ再生産数のばらつきの原因は、やはり病原体だけではなく宿主や環境にも関係する可能性がある。宿主の個人差は重要である。理由はよくわからないが、多くのウイルスを排出したり、より長期間ウイルスを排出したりして、さらに多くの二次感染を引き起こす者もいる。また、咳が出るかどうかにも人によってばらつきがあり、咳をしやすい人はウイルスを拡散させやすい。行動の個人差も重要だと言える。大人数での社交を好む人や、手洗いをおろそかにしがちな人は、スーパー・スプレッダーになる可能性が高いかもしれない。

※1
R0とは、“その病気にかかったことがなく、抗原に曝露されておらずきわめて感染しやすい集団における”一次感染者が引き起こす二次感染者の予想平均数である。R0は、病原体がアウトブレイクを発生させる能力を表し、病原体を制御する手段がない場合の感染性の度合いを示している。一方でReは、集団がすでに“抗原に曝露されている”場合に、流行の後期における感染のリアルタイムの広がりを示す。このReは人間の反応に影響を受けやすい。
※2

SARS-1 2003年に出現し、小規模なパンデミックを引き起こしたコロナウイルス科のウイルス。SARS-CoV-1とも呼ばれる。
SARS-2 2019年に出現し、大流行を引き起こしたコロナウイルス科のウイルス。SARS-CoV-2とも呼ばれる。
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