「声をかけたのは狙いがあるんだよ」

容姿端麗、紳士的な優しさ、裕福、頭脳明晰……この続きってまだある? 一体この男性からあと何が出てくるの?

実はね、君に声をかけたのはある狙いがあるんだよ」いや、来た。やっぱり何かあったんだ……。「僕の右腕にならないか?」え? 右腕?

『どういう意味?』「つまり、僕のビジネスパートナーにならないかってこと」『どんなビジネスをしているんですか?』「僕はね、プロプレイヤーなんだよ

え? プロプレイヤー? コスプレイヤーなら知っているけど……プロプレイヤーって何? 何を言っているのか全く分からずに、きょとんとしながらジェイコブを見つめていると彼は言った。「カジノだよ」「僕はその世界では結構な腕のプロカジノプレイヤーなんだよ。勝率は9割を超える。世界中のカジノを転々としながら、毎日最高級ホテルに泊まって、気ままに暮らしながら稼いでいる」

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容姿端麗、紳士的な優しさ、裕福、頭脳明晰……プロカジノプレイヤー。やっと終着駅にたどり着いた気分だ。人身売買じゃなくてよかった……。なんとなく気分がスッキリした。

「君は磨けば光るタイプ。そして、若い。僕がゼロから教えれば凄腕の女性カジノプレイヤーになれるよ」いや、もう話の展開についていけない。ラスベガスやマカオのカジノには観光がてら行ったことはあるが、本格的なカジノプレイヤーなんて映画の世界でしか見たことがない。

「ギャンブルってね、基本は誰も仕組みを教えてくれないんだ。特にプロ同士は絶対に。でも君が僕の右腕になってくれるなら徹底的に勝てる技を教え込むよ。毎日最高級ホテルに泊まって、美味しいものを食べて、世界中を気ままに渡り歩くんだ」

「僕みたいにいかにもプロっぽいプレイヤーより、君みたいな、いかにもカモにされやすい雰囲気の方が勝負では有利。たまたま観光でこの国に来て、ふらっとカジノに来たみたいなバカっぽさが実は最強なんだよ」妙に納得……だけどめちゃくちゃディスられてない?

「すぐに結論を出さなくていい。まずはダルエスサラームにあるカジノで僕のプレイを見るといい。僕はこのホテルに暫く泊まってダルエスサラームに戻る。いつでも連絡して。君がタンザニアを発つ前に返事を聞かせてほしい」

えーと、ちょっと待って、だから……話が急展開過ぎて全然ついていけない。人身売買じゃないのは安心したけど、つまりは要約すると……私のバカっぽい雰囲気が役立つから、右腕として一緒に世界中のカジノで稼ごうってこと? なによ、この非現実的過ぎるオファーは。

ゴージャスランチが終わり、ジェイコブは連絡先を私に手渡して去っていった。

コーランを読むイスラム教徒の青年。写真提供/歩りえこ