旅作家の歩りえこさんに、自身の著書『ブラを捨て旅に出よう』で綴られていない世界各国でのエピソードを披露してもらっているFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)。

今回は、歩さんが25歳のときに訪れたタンザニアで出会ったイギリス人男性について綴っていただきました。困っていたところを助けてくれた彼は、カジノの“プロプレイヤー”だったそうで、右腕にならないかと誘われたと言います。プロプレイヤーって? 右腕って? なぜ歩さんを?……具体的なお話を教えていただきました。

歩さんの今までの連載はこちら▶︎

初老男性からの「幾ら出せばいい?」

「アフリカの大自然を見ると人生観が変わる」と旅先で出会ったバックパッカーたちが口々に言っていた。大自然も見てみたかったが、広大なサバンナで悠々と生きる野生動物たちをこの目で見てみたい。そう思い、訪れたのがアフリカ東海岸に位置する野生の王国「タンザニア」だ。

タンザニアはサファリだけではない。世界遺産にも登録されているザンジバル島の中心地、ストーンタウンという欧米人に人気の高い観光地もある。サファリは最後のお楽しみにとっておいて、まずはタンザニア最大の都市であるダルエスサラームからフェリーでザンジバル島へ向かうことにした

ダルエスサラームからザンジバル島までフェリーで2時間。観光客と住民でごった返している。写真提供/歩りえこ

ザンジバル島は140年ほど前までは奴隷市場が存在していた場所で、近年はリゾート地のような雰囲気が人気を集め、世界中から観光客が訪れるとても美しいビーチを持つ島だ。

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ザンジバル行きのフェリーをベンチに座って待っていると、60代くらいの白髪のアラブ人男性が英語で声を掛けて来た。「ザンジバルに行くのかい?幾ら出せばいい?
私は一瞬思考が停止した。この初老男性は一体何のことを言っているのだろうか?『どういう意味ですか?』「だから、君に幾ら払えばいい?」

私は訳が分からず返答に困っていると、何者かが背後から私の腕を掴んだ。「悪いけど、僕の連れなんだ。さぁ、行こう」私は引っ張られる腕につられるようにして席を立つと、振り返って思わず息を呑んでしまった。美青年……。

30代前半位だろうか? イギリス訛りのアクセントで彼は言った。「君、一人で大丈夫かい?あの老人は君と幾らで寝れるか聞いたんだよ。タンザニアはアジア系娼婦がたくさんいるから、君を中国人と勘違いしたんだ。彼らにはアジア人の区別がつかないからね」

「僕は世界中を旅しているから、君が日本人だってすぐに分かったよ。フェリーでの移動中はやることないし、よかったら僕の話し相手になってくれない?」確かにフェリーではやることがない。座席に座って2時間ボーっとするなら、この人生経験豊富そうな美青年と話してたほうが余程いい。

ザンジバル島は欧米人に人気のビーチリゾート。写真提供/歩りえこ