菅政権は耳を傾けてほしい…「国民が本当に求める、ワクチン接種の“本音”」

秦 正樹 プロフィール

世代によっても違いが…

また、新型コロナウイルスに感染した際、高齢者や既往症を持つ者の方が重症化しやすいことが既に広く知られている*6。そこで、ワクチン接種に関しても世代ごとに意識が変わるのかも確認してみたい。図2では18-39歳(若年層)・40-59歳(ミドル層)・60歳以上(高齢者層)の3つの世代に回答者をわけて、世代ごとのワクチン選好の違いを見てみよう。

図2 世代ごとに見た場合の実験結果

図2を見ると、世代ごとで、どのようなワクチンが好ましいかがやや異なることがわかる。たとえば、若年層と高齢者層では、ロシアや中国製のワクチン以外であれば、とくに強い「より好み」はなさそうである。

また、高齢者層に限っていえば、「推奨2回だが都合1回(接種1回化)」や「副反応の確率」が、ワクチン接種意向に与える影響が明確に見られなくなった。これらの結果を総合すると、高齢者層は、副反応の可能性や接種1回化などのリスクを低く見積もる傾向にあり、接種のメリットを重視しているとみることができるだろう。

それに対して、若年層とミドル層は、逆にその種のリスクを重く見ていて、世代によって接種促進の要素が大きく異なることが明らかになった。

 

接種率向上、カギは「政府の伝え方」…?

1つ1つの要素の影響力をより細かく見ていけば、今後の円滑なワクチン接種の実施において、国民が一体なにを求めているのかがわかってくるはずである。

社会学者の西田亮介は、とくにコロナ禍での政府の対応を「(国民の声に)耳を傾けすぎる」と指摘する(西田、2020)。世論の感情的な声に過敏に反応できる能力があるのならば、このようなワクチンに対する国民の細かいオーダーにもぜひ耳を傾けてほしい。

また、以上の結果を踏まえて、エビデンスにもとづく効果的な広報戦略の在り方についても指摘したい。たとえば、副反応などのリスクの捉え方が世代間で異なっていることがわかっていれば、それに合わせた公表方法を再検討する余地もあるだろう。というのも、厚生労働省は、当初、副反応(アナフィラキシー疑い)が見られるごとに発表していた。こうしたやり方は、もちろん、情報公開や透明性の観点では良いことなのであるが、逆に、若年〜ミドル世代の副反応のリスクを必要以上に高く見積もらせてしまう可能性もある。

接種率を上げるという目的を最優先するならば、高齢者の接種が一定程度終了して以降は、接種者全体の中での副反応の「割合」を「定期報告」するといったようにターゲットを絞った戦略的な情報の出し方も一案として検討すべきではないだろうか。

あるいは、「多くの人が接種できるよう接種回数を1回とする」という「接種1回化」の可能性が残されたままでは一部の人の接種拒否を高めてしまい、結果的に、全体の接種率を低下させてしまうという本末転倒になりかねない。

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