地方議会の驚愕実態…懲罰処分のトップ当選女性町議が“怒りの反撃”に出たワケ

「議会は私が思っていた希望のある場所ではありませんでした。同調圧力、けん制、いじめや脅しのようなものが存在しました。そして驚きの連続だったのが、町を良くしようという考え方よりも、昔からの前例踏襲の方が正義となっている部分でした」

4月14日、横浜地裁502号法廷――。

「近場の温泉街」として知られる神奈川県湯河原町で町議を務める土屋由希子さん(38)が、自らに下された懲罰処分を不服として訴えた「処分取消等請求事件」の第1回口頭弁論が行なわれ、法廷に立った土屋議員は、張りのある声でこう述べた。

湯河原で一体何が…〔PHOTO〕iStock
 

町議に共有された「個人情報満載のリスト」

土屋議員が懲罰にかけられたのは、昨年9月7日に開催された本会議において、「湯河原町の全滞納者の名簿が、町議会議員に配布されており回収されていない。これは問題ではないか」といった趣旨の質問を行ない、これが非公開の会議「秘密会」での共有を前提に町が開示したものだっただけに、規定(「秘密会の議事はもらしてはならない」という町議会会議規則第92条2項)に反しているとして処分された。

滞納者名簿は、町民税、固定資産税、介護保険料、上下水道料金などの給付金を含んでおり、約2000名に達し、個人名、法人名、滞納の経過や処分内容に及んでおり、厚さは3~4センチにもなる。町の人口は約2万3500人。その約1割に相当する個人情報が満載されたリストが、町議に情報共有され、しかも回収されていない。

昨年3月、土屋さんは「ママの力で湯河原を元気に!」というキャッチフレーズで出馬してトップ当選を果たした。町税等徴収対策強化特別委員会に所属、その場で配布された滞納者リストを手にした時、「吐き気がして気分が悪くなり、町民の情報をこんなにズサンに扱うなどとんでもないことだ」と、思ったという。

個人情報の保護が重んじられ、行政はもちろん企業など民間でも意識の共有が図られるようになった今、各人、それぞれに事情のある税や公共料金の滞納が、リストとなって町議に手に握られるとは、滞納者は思ってもいないことだろう。

 

だから土屋議員は取り上げて質問。冨田幸宏町長は「秘密会の議事は漏らせない」として答弁せず、村瀬公大町議会議長は、「リストが回収されていないことは、秘密会の内容にあたるので懲罰の対象になる」と、土屋議員をけん制した。

この議会の模様を翌日の神奈川新聞が報じ、それを引用する形で土屋議員がSNS(会員制情報サイト)で発信。それを受けて議会は、懲罰委員会を開いて陳謝を求め、それを土屋議員が拒否したことで議会は、出席停止1日の懲罰処分とした。

地方自治体の懲罰処分には、軽いものから順に「戒告」「陳謝」「出席停止」「除名」の4種類がある。二重の処分を受けての“反乱”だが、町が「議会ゆがわら」(令和2年11月号)などで、議会規則を理由にした処分を粛々と説明するのに対し、土屋議員サイドは訴状の中で広く憲法まで持ち出して、その違法性を訴える。

憲法第57条第1項は、衆参両院での「秘密会」の開催を認めている。だが、同条第2項で、「秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの」以外は、すべて「公表し、一般に頒布」することを義務付けている。その法理は地方議会にも及ぶので、「(議会規則において)秘密にすべき議事とは議員の発言内容に限定するものと解するべきである」(訴状より)と、主張する。

これに対して町は、「議会規則第92条第2項に違反することは明らか」と、徹底対決の姿勢を崩さない。訴訟はさらに、地方自治法、地方税法、個人情報保護条例などの観点からも処分の妥当性を巡って争うことになっており、長期化は避けられない。

 
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