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アメリカで“アジア系に対するヘイトクライム”が急増している「複雑な事情」

アジア系へのヘイト・クライムが急増

4月22日、アメリカ連邦議会上院は「新型コロナウイルス憎悪犯罪法案を賛成94、反対1で通過させた。同法案は、主にアジア系を狙ったヘイト・クライム(憎悪犯罪)に対応する連邦、州、地方の法執行機関の能力を高めることを目的としたもので、アジア系へのヘイト・クライムに対処する専門部署を司法省内に新設することが求められている。同法案は以後下院に送付され、検討されることとなっている。

このような超党派立法がなされる背景として、最近のアメリカで、アジア系に対するヘイト・クライムが増大していることがある。

例えば、65歳のアジア系の女性がニューヨーク市内で教会に向かう最中に「ここはお前の居場所ではない」と言って暴力を振るわれた事件であるとか、アトランタのマッサージ店が銃撃されてアジア系女性6人を含む8名が殺害された事件などは、日本でも報道されたのでご存じの方も多いだろう。

アジア系へのヘイト・クライムに対する抗議運動も盛んになっている〔PHOTO〕gettyimages
 

アジア系を対象とする暴力犯罪は、アメリカ史上、幾度となく発生している。

古いところでは、西部で金の採掘や大陸横断鉄道の建設のために中国から多くの移民がやってきたゴールドラッシュの時代に暴力事件が頻発し、1871年には中国系に対する虐殺事件が発生している。第二次世界大戦の際には日系移民が強制収容された。また、ヴェトナム戦争が長期化する中、1970年代にはヴェトナム系の人々が白人至上主義団体であるクークラックスクラン(KKK)による攻撃を受けた。

アメリカでも残念なことに、アジアとの緊張関係が顕在化すると、アジア系をターゲットとした暴力犯罪が増える傾向がある。

比較的近いところでいえば、経済成長を達成した日本が1980年代にアメリカの地位を脅かすのではないかと懸念された時期には、日系のみならずコリア系や中国系もが被害にあった。

そして今日、中国が国際的地位を向上させる中で、先のドナルド・トランプ大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」と呼ぶなどしたこともあり、世論の対中認識も悪化した。

ある調査(*1)によれば、新型感染症が問題となった当初はツイッターでも「#covid-19」というハッシュタグが用いられていたものの、トランプの発言以後は「#chinavirus」というハッシュタグの利用が急増したという。

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