「死ね」「ぶっ殺す」…すぐ感情的になる子どもとの接し方

大切なのは「共感を示すこと」
宮尾 益知 プロフィール

母親への暴力を止めさせたアドバイス

受診にきていた親子に、母親に暴力をふるってしまうという大学生がいました。彼女は大学生になってからASDと診断され、母親が「どうにかしてください」と言って私のところに連れてきたのです。

 

その後、症状が軽くなって改善したのですが、そのきっかけは、娘に「母親である私を近所のおばさんかロボットだと思いなさい」と伝えるように、という母親へのアドバイスでした。母親=自分のことをよくわかっているはずの人と思うから腹が立つのです。わかっていない人に対してはよほどのことがない限り、腹は立たないものです。

一方、娘のほうはイライラした時、膝のあたりからイライラが上がってくるから、そういう時にはピョンピョン跳びはねて解消していると言っていました。気持ちがイライラするのではなく、膝のあたりがムズムズして、それがだんだん上がってくるため、どこへも行かないで部屋の中にいると、発散するために当たり散らしてしまうのです。「そうなる前に、外に出てピョンピョン跳ねてくるんです」と言っていました。

症状が改善していった理由のひとつは、母親の対応がよかったことです。本人がイライラしている時にはいろんなことを言うのですが、全部「なるほど、こういう気持ちなのね」と、彼女の気持ちを受け止め、同じ答えを返したのです。「イライラしているのは、体の問題なんだ」ということを理解させて、その体のイライラ感を減らすように話を持っていったのです。

具体的な対処法として、ストレスや悩みを緩和させるための瞑想健康法「マインドフルネス」も有効です。いまではスマホでも座禅を組んだりするアプリがあるのですが、この女性はそのアプリを見ていると、そこの場所に行っている気持ちになると言います。徐々にイライラしている気持ちを向こう側に移していき、落ち着いてきたら、その落ち着いている景色に自分の気分を持っていくのです。

photo by iStock

以前は毎日のようにこの女性には暴力行為が見られたのですが、その後、頻度は漸減し、週に1~2回にまで減った時に「あなたは『全然よくならない』と言っているけど、前は毎日だったのが、いまは週1~2回に減ったんだよ。よくなっているじゃない。自分の悪いところばかり見るからよくないんだよ」と話をしたら、それで納得するわけです。そういった話を一年ほど続けたら、暴力的な症状はほとんどなくなりました。

結局、彼女のような人は、暴力をふるうことを過剰に意識し、暴力を止めることそのものをターゲットにしてしまうから、なかなかよくならなかったのです。

「前はこれだけの回数の暴力を起こしたけれど、いまは1回ですよ。前よりいいよ、よくなってるよ」

ターゲットとして別のよい要素(この場合は回数)を見つけてあげて、それを常に言って伝えてあげることが大事なのです。

そうするととてもよい結果につながります。

関連記事